以前クラスメイトが作った釉薬テストを目にして愕然とした。
窯の中で溶解しやすいアルカリ土類の釉薬が、受け皿に癒着し、
クラスメイトは必死で展示用に受け皿から釉薬テストを引き剥がしていた。
そこには癒着していたはずの受け皿と釉薬テストが見事に分離されて、隙間には綺麗なはがし痕が出来ていた。
ふと考えた。このような釉薬の表情を見たことがないのはなぜか、
釉薬というものが古来から「防水、質感、手触り」などの用途が必要とされてきた。
つまり焼き物と釉薬のあいだの空間が見える事は無い。あってはならないからだ。

はがれやすい釉薬をつくり、陶板の上に置き焼成する。
焼成し程よく癒着した釉薬を根こそぎ引きはがす。
無釉と施釉のあいだにある「禿釉」ともいえるこの表情は、今でもお気に入りであるが、実物はもう壊れてしまった。