☆ヤジロベー
2016.2.29
明治末から戦前まで海外に輸出されたノリタケ製品を“オールドノリタケ”と呼ぶのだが、数は少ないがその頃の国内向けファンシーウェアやテーブルウェアも広い意味でオールドノリタケに含めていて、これはこれでなかなか興味深いのである。
初期ヤジロベーマーク(1909〜1911年頃)のこのフルセットは、プリントされた地味なスミレ柄で、それ自体あまり面白みはないが、明治の終わりにこのお猪口のように可愛いサイズのデミカップでコーヒーを飲んでいたのはどんな人たちだったのだろうと想像すると、この平凡な図柄が俄然楽しくなってくる。金彩が多用され装飾に満ちた輸出用図柄とは正反対の、地味で清楚な図柄が当時の日本人には受け入れられたのだろう。それに何よりも、当時は外貨稼ぎの輸出用が生産の主流で、国内向けに生産コストはかけられなかったのだろう。
ボンボン入れの縁取りが金ではなく朱色なのも、やはり“和”の雰囲気だ。
時代が下ったヤジロベエーマーク(1911〜1940年頃)のころになると、国内向けにもアールデコ模様が見られるようになるが、やはりインパクトの強い奇抜な図柄や形、鮮やかな色使いは少ないような気がする。
白黒金銀のみを使ったシンプルで大胆な花瓶も面白い。白い部分はデコではお馴染みのラスター彩で変化をつけている。「オールドノリタケと国産アンティークコレクターズガイド」309ページの“日本陶器会社の商品カタログ”の中にある花瓶がまさにこれである。かなり使用の跡があるが、いったい当時の人はどんな花を活けていたのだろう。私なら考え込んでしまうところだ。
そんな中にあってこの大型ボールは、今見ても驚く配色で、むしろ痛快である。