☆巻き鍵

2016.5.5

 ところがこの巻き鍵の穴のサイズというのが微妙で、他のどの鍵よりも僅かに大きめとは言っても0.1o単位の差なので、かなりアバウトな作りの当時物の鍵で合うサイズを見つけるのは、ほとんど勘がたよりでなかなか難しい。それに、第一そんなものを置いている骨董屋自体そう多くはないはずだから、ともかく古時計をいくつか掛けている店を、とりあえず家から持参したひび割れた鍵を手に片っ端から当たっていったのだった。結局、ある店で「これで大丈夫なはず」と勧められたものを、合わなかった場合次回の骨董市で返品する約束で買ってきたのだが、家に帰り少しドキドキしながら差し込むと、幸いピッタリのサイズであった。再び元気にカチカチと動き始めると、ボンボンと柱を響かせながら時を知らせてくれた。

 そして・・・今回も買ってしまったオールドノリタケ。淡〜い色合いの小花模様の泥漿盛り上げ。連れて帰って、と頼まれたような気がして・・・

 3月の京都大アンテイークフェアでは、結局オールドノリタケも買ってしまったが、当初の主な目的は古い掛け時計の巻き鍵を探すことだった。わが家には古時計が8個あって、その中の一つのねじ巻き用の真鍮の鍵が引っ越しのどさくさで無くなってしまったのを、他の時計の少し小さめので無理矢理代用していてひびが広がり、決定的に使えなくなっていたのだった。

 手がかかる上に正確な時間もわからず絶えず騒音を立てている古時計という代物。(ちなみに読みは“ふるどけい”ではなく“こどけい”なのだそうだ。)しかしこの実にアナログな音が、特に深夜などは自分の心臓の鼓動と連動しているように感じられ、長い歳月の懐に抱かれているような安心感に包まれるのだ。