☆シノワズリ
2015.1.16
一般に“シノワズリ”と呼ばれる美術様式があって、フランス語で chinoiserie と書けばようやく想像がつく。中国趣味のことである。昔ヨーロッパでは、このシノワズリの大流行があって、東方への興味や憧れから、芸術のみならず生活のあらゆる分野で好まれた。
まず、描かれている鯉は中国では“龍の子”と言われ、故事にも登場する出世魚である。中央の建物は典型的な中国風。火を噴く馬が天を翔けている。その躍動感がたまらない。この図柄に何か意味があるのか私にはわからないが、それにしてもなんと大らかでユーモラスで自由な絵なのだろう。楽しさ満開である。
オールドノリタケにもシノワズリの図柄は多いが、少なくとも国内ではそれほど人気があるようには思えない。おそらく日本は大昔から大陸文化の影響が強く、その模倣の中から独自の美を創り出してきた歴史があるため、西洋人が感じるほどのインパクトに欠けるせいではなかろうか。
私も正直なところ、シノワズリにそれほど惹かれる図柄はないのだが、ただ写真の品は理屈抜きで面白く、さすがにこれを見過ごすわけにはいかなかったのである。