☆あの日の記憶

2015.1.25

 その頃の私は、古伊万里や、輸出用九谷にも少し興味を持ち始めたばかりだった。その店に並んでいたヨーロッパの名窯の品々は、到底私などを寄せ付けない高級感を感じさせたが、そんな中でもこの図柄は、今見ればやはりジャポニズムの影響か、びっしり描き込まれた桜の花の地味な色合いが奥ゆかしく、そんなところに惹かれたのかもしれない。

 20年前、デパートの骨董市でオールドノリタケというものに初めて出会ったのは西洋骨董を扱う店だったが、その頃特に興味もなかった分野にも関わらずその店で足を止めたのは、壁面の棚に飾られていたオーバルボウルの図柄から目が離せなくなったからだった。

あの活気のない閑散とした骨董市の空気とともに、突然鮮やかに蘇った出会いの場面だが、仲を取り持ってくれたイギリスの名窯ロイヤルウースターの、“ボストン”と名付けられたこの洗練された図柄を、記念に手元に置くことにした。

 先日、なんの気なしにヤフーオークションサイトを見ていて、1枚の中皿で突然記憶が蘇った。そうだ、この図柄だった!

 そして、そのボウルから目を落とし、手前のショーウィンドゥの中を覗き込んだ私を、あの夕焼けに染まる風景のオールドノリタケ皿が待っていたのだ。そうだ、そうだった!