☆プラス思考で

 はて、いったいどんな蓋がついていたのか。ただそれが知りたくて、家にあるオールドノリタケ本を片っ端から当たってみた。実物の写真は見つからなかったが、「華麗なるオールドノリタケの世界」〈マリア書房〉の中の、ノリタケカンパニーリミテド提供の画帖写真(p.106)に、それらしい壷の絵を見つけることができた。(右下の飾り壷)

 そんな物好きの今回の収穫物は盛り上げ花瓶で、以前から特にその空の様子が印象的で好きな図柄だった。小品ながらまとまりよくできているのもいい。花瓶と言ったが、おそらく元は蓋があったのだろう。

 ちなみに画帖写真左上の蓋物は、現物がわが家にある。それも今回初めて発見したことである。まさに楽しみは連鎖する。

2014.6.24

 「世の中には2種類の人間がいて、お金の好きな人間と物の好きな人間である。我々は皆、後者なのである。」 例によって繰り出した京都大アンティークフェアからの帰りの車中で友人の一人が言い出して、一同いったんは同意したものの、それが要らないものばかり買ってしまった言い訳にも、蓄えのない言い訳にもなるはずはなく、所詮は単なる“物好き”と、周囲からは後ろ指刺されるだけである。

 もし画帖のような蓋が載っていたとしたら、おそらくそこには壷の足元と同様の盛り上げが贅沢に施されていただろうと思うと、その姿を想像してみるだけでとても楽しい気分に浸れる。欠けていることを嘆く必要はない。あくまでも“プラス思考”が想像力を掻き立て、むしろいい状態で残っている壷の胴体部分に感謝したい気持ちにさえなるのである。