売り物でないものを、売り物のごとく店に置いてはならない。店主が同時にコレクターであったとしても、それを前面に出してはならない。たとえ高価なものであっても、無理をすれば憧れの品を手に入れられるかもしれない、という期待感や高揚感を、客に抱かせるのがプロの売り手であるはずだ。

✩ウッドランド

2014.2.10

 その時初めて実際に見たウッドランドパターンだったが、この時のこともあり、その後しばらくこの図柄は私には高嶺の花だった。だから初めてこのパターンを手に入れた時は、何かコレクションが新たな段階に入ったという感さえしたものだ。

 オールドノリタケコレクターの中には、特にこのウッドランドパターンのファンという人も少なくないようだ。絵に独特の空気感があって、不思議とクセになる図柄なのである。

 オールドノリタケを集め始めた頃、ネットオークションで落札したウォールポケットの出品者が、隣町にオープンしたばかりの店だと知り、品物の引き取りも兼ねて早速出かけた。

 店舗らしくないため探すのに一苦労したが、ようやく見つけて店内に入ると、残念ながら期待したほど品数も内容も充実してはいなかった。ただ、奥のショーケースの中にあった数点のカップ&ソーサーだけは、収集初心者の私にもその価値がひと目でわかるよい品ばかりだった。

 その中に、特に私の目を引いたメルヘンチックな風景絵の華奢なペディストールがあったので、その値段を恐る恐る尋ねた。すると店主は「これは売り物ではないんです。このウッドランドが好きで持っているんですが、今買えば3万は下らないですよ。」と言ったが、私はこの言葉を聞いて、心底この店に失望した。