☆今ここにある奇跡
そして、何といっても優雅なフライングスワンのセット。黄色は珍しい。大ボウルは大規模な修復がなされているが、表からは目立たない。
たとえば今あなたの家に、あなたあるいはあなたのために誰かが、50年以上前に買ったものが残っているだろうか。因みに私の家には2つある。1つは私の小学校入学の祝いに母方の伯父が買ってくれた文机である。地元の家具屋の店頭に天井近くまで積み上げられていた中から、可愛いプリント模様に惹かれて迷わず決めたものである。狭い畳の間の片隅に、初めて自分の場所を確保できた喜びを今も忘れない。それは本来の勉強机から単なるテーブルに、そして押し入れの仕切りにと用途を変えながらも、何度も廃棄の危機を乗り越えて、今は書斎の隅にOA機器置き場として不釣り合いながらもその場所を確保している。もうここまで来ると容易には捨てられない。
オランダ少女のコンディメントセットはスプーンの先端に注目。グーの手の形が楽しい。
そんな調子だから、割れ物が何十年もセットで無傷のまま残っているなど、まさに奇跡だと思ってしまう。しかも、オールドノリタケの多くは海を渡って帰ってきたのである。特にセット物がいい状態で揃っている場合は、奇跡を目撃する眼で見て欲しい。
このように、必要でも高価でもないものがなぜ捨てられずに今あるのか。あるものはその物への人の思いの強さからだろう。しかし実際多くはただの偶然に過ぎない。まあそれにしてもその物の強運は間違いない。私は、50年、100年と経った古物に価値があるのは、この運の強さではないかと思う。古物を身の回りに置くということは、そのパワーに囲まれるということだ。パワースポットなど出かける必要はない。
1つでも生き残りは大変なのに、セットで揃っているとなるとパワーはかなりのものである。私など、新しくティースプーンを5本買ったとしても、不思議なことに1本、また1本と行方不明にしてしまって、何年かすると大抵3本、ヘタすると2本になっていたりする。金属のスプーンの数が減ることなど普通あり得ないはずなのに、これはいったいどうしたことか。
スワン型ソルトセット。専用スプーンにオリジナルボックスも揃っている。
先日の京都大アンティークフェアで入手したカード立てセット。単品では色違いを持っているが、状態のいい6個セットは珍しい。淡いピンクがロマンチックだ。数少ないこのホームページのファンでもあるマジック&ギャラリーさんからの購入だが、「オールドノリタケがブームであろうとなかろうと、これからもこれで行きます、好きだから」との痩せ我慢、いや心意気に敬意を表したい。
ソルト&ペッパーセット。
ついでに、同じカード立ての色違いと、少し違うタイプ。
2013.7.20
もう一つは、小学校低学年の頃、成績のご褒美にと母に買ってもらったフランス人形である。実家の押入れの奥に埃をかぶったまま仕舞い込まれていたのを最近持ち帰ってきた。地元の岡田屋百貨店(イオンの前身)1階の売り場でこれを選んだ時の晴れやかな気分が忘れられない。思えばあの頃が私の全盛期だったのか!?