☆金ピカはお好き?

2013.6.16

 また、エッチングと思しき品で、金彩ではなく朱漆のような風合いのものがあり、かなり渋くて好みである。これなど結構珍しいのではないかと思う。

 人間と金との関わりは数千年に及ぶが、かの有名なツタンカーメン王の黄金のマスクが物語るように、かつて金は権力の象徴として支配者の独占物であった。現代社会ではもちろん身近なものになったが、希少品であるがゆえに高価なことに変わりはない。

 普段使いに重宝な小鉢のセットだが、縁取りの細いエッチングがなかなか効いている。裏印の“ライジングサン”が削り取られていて、敵国NIPPON製であることを隠してまで愛用したアメリカ人の心情が直に伝わってくる。

 金彩といえばすぐ思い出すのが、エッチング技法による作品群である。ものの本によれば、これは薬剤(フッ化水素)を用いて生地表面を部分的に溶かして凹凸をつけ、その上から金彩を施す技法で“腐らし”とも呼ばれている。技術的にも難しく劇薬を用いるため、高級品にしか使われなかったという。凹凸の陰影で浮かび上がる文様が、時には日本の四季の花々であったりして、全身金ピカであっても不思議と嫌味でなく落ち着いている。

 デコ図柄にエッチングとは珍しかろうと興味を引かれ、購入してみたらそれはエッチングではなく金の吹き付けであった。道理でその記述がなかったわけだ。思い込みは禁物。

 また、ジュール(エナメルで、宝石のように立体的に仕上げたもの)との組み合わせが一層格を上げている品もある。

 金盛りはコバルトの深い紺色とよくマッチして、豪華さばかりでなく優美さも醸し出す。もちろんこうした高級品には上質な金が使われていて輝きも違う。

 オールドノリタケには、貴重な金を使った作品が数多く存在する。

 それにしても、このように手の込んだ高級品であり、もっと注目して欲しいのに、今日のオールドノリタケ市場では、エッチング製品はそれほど高値で取引されていない。これを喜ぶべきか、悲しむべきか・・・。