オールドノリタケのモールド作品に、あまり上品なものはないと勝手に決めつけているが、例外的な下の3点を紹介したい。
骨董の先達である友人の教えに、「品のいい骨董店主から買うこと」というのがある。たいがい多くの骨董屋に出入りすると、さすがにこの言葉の意味がわかってくる。店主の骨董に対する愛着が、押し付けがましくなく自然とこちらに伝わってくると、肩の凝らないおしゃべりも楽しく、買う買わないは別として、その店内が実に心地よい空間となって客を満足させてくれるのだ。また、そんな店には不思議と気に入った品があるし、値段交渉にストレスもない。自分は無理なのに、骨董屋には“上品”を求めているのだから虫のいい話だが・・・。
☆品(ヒン)
2012.8.24
☆5頭の馬の表情が実に穏やかで、構成も嫌味がない。色のトーンも上品だ。
常々“品”は大事だと思っている。我々は顔つきや身なり、言葉遣いでよく“品”を口にするが、それは実はもっと内面的なもの、つまりその人の考え方、生き方そのものが発するオーラのようなものだと思っている。だから自分もできることなら少しでも品よくありたいとも願うが、どうも難しそうだ。
ところで、ある仏教の考え方によると、人は死んで極楽往生するときに、生前に積んだ功徳の違いによって3つにランキング付け(上・中・下)されるのだそうだ。そしてそのそれぞれがさらに“上・中・下”に分かれ、合計9段階の“品”ランキングが出来上がる。例えば上品(じょうぼん)の中とか、下品(げぼん)の上とかだ。それぞれに違う課題をクリアすれば、どんな下の下の悪人だって極楽往生できるというわけだ。しかしこんなことを聞くと、死んだら楽になる、とか、ゆっくり休める、とか言われても、往生際がこんなことでは、死後の世界も本当は結構生きづらい、いや、死にづらいのではないかと疑ってしまう。だからこの際しばらくはこの世で、ランキングの烙印を押されるまでを曖昧に生きている方がずっと楽なのかもしれない。
☆ドングリという、一見地味なモチーフにも関わらず実に豪華で、“品”を落としがちな金の吹き付けも全体的によくコントロールされていて、この辺になると「さすがオールドノリタケ!」というところだろう。
☆このビアマグは、何よりも鹿の姿がよい。取っ手の角がリアルで面白い。