エナメル技法によるデコ作品には他のデコのような派手さはないが、落ち着いた配色の中に独特の気配が漂っている。それほど注目されていないのがむしろ不思議だ。

☆彼らのテリトリー

2012.3.4

 居間の窓越しに庭を眺めると、外はまだまだ寒いのだろうが、日差しはもう確かに春のものだ。2月以降小鳥の訪問が頻繁になってきた。主にヒヨドリだが、時折メジロ、シジュウカラ、あるいは稀にジョウビタキも来たりする。ヒヨドリが、ホーバリングしながら侘助の花の蜜を吸っていたりする。家の花桃の木の枝が止まりやすいのか、ゆったり休憩している姿も見かける。一羽が頻りに鳴いていたかと思うと、やがてお相手がやってきて、しばらくは仲良くデートを楽しんでいる。花桃も、今はまだ蕾も固いが、1か月もすれば花弁をついばむ彼らに気が気ではなくなる。しかしこちらはただ見ているしかない。家の一歩外はすべて、彼らのテリトリーなのである。

 オールドノリタケにも当然、鳥をモチーフにしたものは多い。しかし小鳥の可愛さの表現ではやはりフィギュアだろう。特に比較的古いM-NIPPON印には、のんびりした顔付きのユーモラスな小鳥も多く、それがまた楽しい。

 また、泥漿盛り上げにはこれぞ職人芸といった秀作が多い。写真の花瓶は、私の中では1,2を争う名品である。赤い実をついばみにきた鳥の羽の一枚一枚までもが丹念に描かれていて思わず唸ってしまう。