6KT8CSPPミニアンプ

めのさんのものつくりの掲示板で、めのさんの次回作はCSPP (クロス・シャント・プッシュ・プル)アンプに挑戦したいということから、出力トランスの製作をお願いされ、 一次側プレート側巻線とカソード側巻線をバイファイラ(電線を2本持って一緒に巻くことです)で巻いてみたところ、 非常に良い特性が得られることが分かり、私もCSPPに挑戦したくなりました。

CSPPという形式のプッシュプルアンプが存在することは知っていましたが、その内容は全然理解していませんでした。 ちょっと興味を持って勉強しようとしたのですが、難解で今でもちゃぁんと理解できているわけではありません。したがって CSPPに関する解説は(今は)出来ません。

CSPPの特徴の中で、私が特に興味深いと思うのは、プッシュプルの信号合成でしょうか。DEPPが出力の直列加算のために出力トランスの 一次側の電磁結合によってプッシュプルの信号合成をしているのに対して、並列加算のCSPPでは電磁結合に頼る必要がありません。 プッシュプルの信号合成をトランスの電磁結合に頼らないという点は差動PPと同じです。プッシュプルながらシングルの音がするという 差動PPの評価が、もしこの点に因るものであれば差動PPと共通のテイストを味わうことが出来るかもしれません。さらにCSPPは A級動作しか出来ないという差動PPの欠点とも無縁ですので、大出力を望む場合に有利です。

回路図

多極管CSPPアンプとしては非常にシンプルな回路です。差動PPと比較して、CSPPは大出力を望む場合に有利だと書きましたが、 CSPPは出力段のKNFが50%も掛かるので、終段の利得が2以下と非常に低く、大きなドライブ電圧が必要ですから、出力が大きくなるに つれて電圧増幅段の設計が難しくなっていきます。本機は私のCSPP初挑戦のアンプですから設計しやすくすることを目的に、複合管2段構成で 1W+1Wと控えめな出力を設定しました。

選択した真空管は6KT8です。この球はμが100の三極管とバイアスが非常に浅い五極管の複合管ですので、今回のアンプにうってつけの球です。 AESのバーゲンセールで@$1.50と非常に安く購入できましたし。

本機で使用したトランスは、めのさん用に巻いたトランスを元にミニアンプ用にアレンジしたものを使用しています。トランスの詳細は こちらでご紹介しています。

この回路のポイントは、初段の負荷を出力段の逆相側のプレートに接続したブートストラップ回路です。このブートストラップのおかげで、 初段の利得と最大出力電圧をちょっぴり大きく取ることができました。ほんのちょっとのことですが、ドライブの難しいCSPPを2段構成で まかなうには非常に有効でした。本機製作に先立って行ったバラック実験の結果はこちらで紹介しています。

 測定データ

以下に測定結果をグラフにしたものを列挙します。

無帰還状態と仕上がり状態の周波数特性の比較のグラフ(上図はLch、下図はRch)です。

やはり2段構成では利得が不足気味で、ほんとはもう少しNFB量を大きくしたかったのですが、6dB弱ということになりました。

高いドライブ電圧が必要なCSPPにおいては、下手するとドライブ段の歪が一番大きくなるなんてこともありそうです。 本機では、まぁ普通の歪率を記録しました。

仕上がり状態の出力インピーダンスを注入法で測定しました。DFに換算すると8Ω負荷でLchが15.52、Rchが14.43となります。 ON/OFF法で測定するとLchが15.63、Rchが14.08でしたので、今回はほぼ同じ結果となりました。ちなみにNFB無しの時は Lchが7.81、Rchが7.52で、KNFが50%と深いCSPPの特徴が良く出ています。

クロストーク特性はまあまあ優秀な結果が出ました。120Hz付近に山が出来ていますが、これは本当はクロストークではなくハムノイズを測定した 結果です。つまりチャンネル間の漏れ信号よりもハムノイズのレベルが高いということが言えると思います。

 総括

以下、工事中!

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