からだじゅうを耳にして 聴き分けていた 路地から近づいてくる バイクの音 そして 待っていた 戸口で止まり 郵便受けが小さな音を立てる瞬間を いつ だれから 届く当てがあるわけでない 井戸の底から見上げる遠い空のように 何もない 今日 ひとすじの光を 握りしめたくて 10代の夢から墜ちてゆく 病に閉ざされた 長い日々 わたしの詩は 耳を澄まし 音を待ちわびて 生まれた (2011年3月)