陽の満ちる場所
風が乾いて
小川の水面は
赤い彼岸花を映していた
あなたの眠るお墓をさがして
墓地をのぼる
あ トンボ
行く手の葉にふいに留まって
問いかけを待っているようだ
ずっと会いたかった
ふとんの縁からかすかに手を動かして
さようならをした病室
次に訪ねたとき
もう空っぽの部屋で
わたしの手は それきり
宙にさまよったままだ
ゆるやかな山に抱かれた
明るい斜面
どこかにあなたはいる
今度はしゃっきり手を上げて
ここよ ここ
ふり返れば なつかしい笑顔が
風が渡る
苦しみを散らし
生きたよろこびだけを掬いとって
せめて
陽の満ちる場所に
眠らせて
(2012年11月)
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