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  まつりのあと  −こころの温泉in潮岬−



秋晴れを待たず
まつりは終わった

背中に小さな光をともし
時をかけ
距離をこえて
出会えるはずもなかったひとびとが
集った

太平洋にせりだした
半島のちっぽけな南端
海の匂いと灯台以外に
何もないところ
いちばん忘れられている場所へ

伝えたいものがある
聴きたいものがある
ただ それだけだったかもしれない

誰もがほんの少し
やさしくなりたい
日常に降り積もる澱みをはらって
熱いおもいを語りたい

こころの底からうなずいたり
こころの底から笑ったり
潮岬の夜に
ふつふつと温泉が湧いていた

光の風が通りすぎて
いまわたしの目の前に
海を染める夕焼けがひろがる

語り残されたことばが散ってゆく
ほろほろと苦い
まつりのあと
空の朱色は 
わたしだけの あとのまつり






                                                      
 (2005年10月)

 
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