あるとき ある場所に行こうとして 果たせなかったことがある それは旅というより 土地とひとを訪ねる まぶしいくわだて 風が吹いて 小さな疵が大きなひび割れを生み ついに 約束は干涸らびていった そのように いくつか 見るはずだった風土 会うはずだったひとを 折りたたんで しまい込んで 忘れたふりで生きてきた 光のなかで舞う微塵のように ときが容赦なく降り積もる 朽ちることに向かって歩いている 夏の終わり 行かなかった場所がふいに起ち上がり わたしを呼ぶ (2008年9月)