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贈り物
それはまるで
父のために用意されたように
喪失の底にいる日々に
小鳥のように舞い降りてくる
母が好きだった空色や白
もっと明るく黄色や赤の花の鉢
何ひとつ楽しみの持てなくなった母に残されたのは
自分への毎月の花のプレゼント
自分で選んでめぐり来る季節を約束したのだ
もうどこにもいない母あてに
開花をむかえた花たちはいそいそとやってくる
箱を開けて耳を寄せると
陽ざしのように聞き馴染んだこえが
父だけに聞こえてはこないか
(2001年10月)
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