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帰る
一枚だけ残して
母の寝間着をわたしが着る
洗っても洗っても
どこかに苦しみが滲んでいるはずなのに
最期のすがたは時間にすすがれ
温もりだけがもどってきて
わたしを包む
母はわたしを産んだが
わたしは誰をも産まなかった
だから まっすぐに
あの母の眠っている場所へ帰る
ただいま と
時の重なりとともに
こぼれ落ちるものがある
背中の寒い夜は
母を着て
胎児のようにまるくなって眠る
(2001年11月)
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