越中のマッターホルン 鍬崎山(2,089m) 

−その1 2度目の正直−


鍬崎山山頂からの薬師岳、最奥に黒部五郎岳。

 2年ぶりに訪れた鍬崎山。
 2月の大雪の後、異様に暖かい3月となり、既に春山の雪に変貌していました。
 この日もなま暖かい天気。ただ、くもりの天気が幸いしてか、大品山より上部の雪はしまって滑りやすかったです。

日時:2008年3月23日(日) 天候:くもり
メンバー:やまもりさん、ひじかたさん、たかはし
コース・タイム:粟巣野スキー場5:57-スキー場最上部6:26-貯水池7:08-大品山8:36/54−1,756m10:48-頂上12:07/12:54-大品山14:38/15:00-粟巣野スキー場15:55

△1,756ピークからの鍬崎山
標高1,850mあたり。 もう、春。 雪が割れる! さあ、頂上です。背後には富山湾が大きく。
これを見たかった。頂上からの薬師岳。 弥陀ヶ原、大日連山の奥に剣もちょこっと。
頂上直下を楽しむ。快適!
標高1,650m辺りのブナ林。ここもいい! 大品山1,250m辺りのブナ林。悪雪でも飛ばす!

 【記録 
 前回は素晴らしいパウダーに歓喜したものの、その分ラッセルに疲れピークを踏めなかった。今回、最近の陽気でパウダーが期待できないものの、山頂からの薬師岳展望をゲットしよう。

○前夜は富山の幸でエネルギー充填完了!
  土曜日発のため、早めに滋賀を出発し、一路、富山市内の「とろ一」へ。予約の電話に対して、土曜日で一杯と言われて心配したものの、入店した午後8時過ぎには丁度、席が空いたグッドタイミング。早速、サービスのイカの黒づくりの他、うなぎのせいろむし、ホタルイカの酢味噌、刺身、名物おから、すりみあげ、最後にお薦めと言われた、コラーゲンたっぷりのオイボ(スズキ科イシナギ)の酢味噌で、お腹一杯、お肌つるつる、標高差1,500mを越える戦いの準備は完了、となりました。
 お勘定の際には、店の方に「何処から」と尋ねられ「滋賀です」と言うと、「前も2人は来られたよね。」と覚えていただき、気持ちよく店を後にし、立山山麓へ。
 らいちょうバレースキー場駐車場にはトイレもあり、ここで車中泊。

○そっ、そんなばかな!
  雪は十分なのに早くも営業終了となった粟巣野スキー場を、予定どおり5時30分に出発するべく準備も整い、ゲレンデに立つ。元気のかたまりのH氏は、いつもの「黄色のヘルメットに、ストックは新調したこれも黄色のピック付きの優れもの。」いつも最新ギアで固めてくる。うらやましい。
 と、「あれ?おかしい!」と、H氏が焦る。ビンディングのヒール部分が固定できない。動く。前日、入念に調整し、触らなくてもいいところまでチェックされたことが災いした模様。
 「やっぱ、あかんわぁ。」 結局、特殊な工具がないと調整不能なため、工具をどこかで調達して修理することとし、残る2人はやむなく、「申し訳ないけど、先に行ってきまぁす。ゴメンナサイ。」
 でも、きっとあの人は、登ってくるはず。

○大品山を越えて、問題の痩せ尾根へ!
  スキー場を抜け、送水管沿いに登っていくが雪はまだまだたっぷり。貯水池まで来ると、いつものように左手に大日連山が白く聳える。ブナ林の中を高度を上げ、大品山に予定通りに到着。テントが一張りあり、朝早く鍬崎山を目指したのでしょう。一旦標高差90m近くシールのまま下って、さあ、いよいよ残り750mの登り。雪は適度に緩み、クトーなしでどんどん登っていける。大品山からはたくさんのスノーシューのトレースがあった。ゴンドラ利用の登山者でしょう。途中、テント泊の2人組が滑り降りてきた。条件はグッドのこと。
 さて、前回苦労した△1,756mピーク手前の痩せ尾根。先行者はスキーで沢状斜面を左手の尾根方向へトラバースしているが、痩せ尾根にはしっかりしたスノーシュー踏み後があり、スキーをザックにくくりツボ足で、これをありがたく利用させていただく。難なく、10:48に△1,756ピークに到着した。鍬崎も近くなり、今回は行けそうです。

○黄色ヘル、黄色ピック付きストックの人が山頂に、まさか。
 △1,756mから少し下った後、いよいよ、残り標高差350m。ここからは、さほど問題となる箇所はなかった。堅い雪面もなくシールもよく効く。標高2,000mで方向を南東にかえ、ここからはピークへ最後の緩やかな斜面に変わる。そして山頂へ! 
 そして、そこには、「黄色ヘルメット、新しい黄色のピック付きストックを持った人が!」立っている。ま、まさか、出発地点で、やむなく置いてきた元気のかたまりH氏の装束と似ている、あの人なら不可能を可能にする?どこで、ボクラを追い抜いたん? でも、そんなはずは。 そう、なかったです。駐車場に止めてあった京都ナンバーの方でした。あまりにも似てて、びっくり。

○山頂からは360度の大展望
 ドーンと、目の前に薬師岳。奥には黒部五郎岳、北ノ俣岳。当然、立山連峰、弥陀ヶ原ではアルペンルートの除雪が進んでいる、大日連山の背後に黒い岩峰、剣が顔を覗かせる、毛勝連山、大きく富山湾、白山連峰や周辺の山々、そして、今年は大雪となった富山の山々(これはどれがどれやら、わからない。)
 特に、薬師は山頂に立たないと決して見えず、大きく鎮座する姿は圧倒的。一見の価値はある。

○快適滑降と、あっ、落ちていく!
 いよいよ滑降。適度に緩んだ雪は、とても滑りやすい。これは素晴らしい。快適にターンを刻み、あっという間に高度を下げていく。
 すると、その時。あっ、標高1,900mあたりで、Y女史が頭を下、スキーを上にと、逆さまになって沢を滑り落ちていく。中々止まらない。こら、あかん。どうしよう、成すすべもなく、見失わないように見守ると、10mを超えてようやく止まった。ふう。よかった。こういう場面であの「新しい黄色のピック付きストック」が役に立つのだろうか?
 ドンドン続く、いい斜面。気持ち的に引いてしまったY女史を尻目に、「ホッ、ホッ、ホッ」、と自然に声も出てきます。

○やっぱり登ってきていた!
 この、ターンの際の「ホッ、ホッ、ホッ」、急な沢をトラバースする時の「怖ぁーい」というは、大品山に遅れて登ってきたもう一人のメンバーH氏の耳にまで届いていた。そう、ビンディングを調整する特殊な工具を富山市内のコメリで開店を待って調達後、大品山まで登ってきた。
 やっぱり、「とろ一」で、一人だけ「特上うな重」を食べた以上、その分、汗かかないとエネルギーが暴発してしまう?
 さすがに、大品山からは雪も変わり腐ってきたものの、ブナ林の中を気持ちよく滑り降ります。
 最後に、誰もいない粟巣野スキー場のいい斜面に思いのままにターンを刻んで、いろいろありましたが無事、充実の山スキー山行を終了しました。あ〜あ、楽しかった。

その2  途中敗退

−素晴らしい山でした。でも、敗退。次こそ!−

天に突き上げる鍬崎山(大品山より)
 方角によってその姿を変える山は多いけれど、これほどまで変貌する山もそうはない。
 そして、そのコースもとても魅力的。

日時:2006年3月4日(土) 天候:快晴
メンバー:やまもりさん、たかはし
コース・タイム:粟巣野スキー場6:07-スキー場最上部6:31-貯水池7:21/30-大品山9:15/30−1,756m12:07/35-1,800mあたり12:55/13:30-大品山15:11/30-粟巣野スキー場16:20

 前日までの積雪にパウダーを期待して、鍬崎山を目指すため、深夜、粟巣野スキー場に到着。スキー場ボトムの610mから2,089mまでの単純な標高差は1,480m。でも、大品山からの下りや小さいアップダウンがあり、パウダーを楽しめるがゆえにラッセルにつらいアルバイトしなければならず、ハードです。行けるところまで頑張りましょう。

 朝、圧雪されたスキー場から登りだし、スキー場トップから送水管沿いに山に入っていきます。ややモナカ気味になった新雪をラッセルして登ってから、左手が常願寺川までズドンと落ちている細い尾根状のルートを通って、標高1,000mの貯水池に到着。
 ここからいよいよ本格的な尾根の登りとなります。情報どおり、急斜面の右手下には貯水池が待ち構えており緊張しながら、また、朝の新雪の下に隠れた堅い雪面や狭い尾根上の木々に大きな塊となった雪をこえるのに苦労しながら、高さを稼いでいきます。

 それでも、急傾斜はすぐ終わり、気持ちのよい朝のブナ林中を新雪40cmほどをまだ余裕で気持ちよくラッセルしていきます。所々には赤テープが残置してあり、これはいいやら悪いやら。左手には大日連山が朝日に輝く純白の姿を現しています。9:15大品山到着です。ほぼ、時間通りでこれなら鍬崎山ピークも踏めるだろうと、まだ思ってました。

大日連山 4月に行くでなぁ 大品山の大きなブナ

 平らな大品山で休憩です。すると、鍬崎山が太陽の光を浴びて、白く輝いています。その姿の凛々しいこと。こんな美しい山も久しぶりに見ました。感動的ですらありました。
 登行欲をそそられますが、ここまで標高差800mを登ってきて、このあと、さらに100m下ったあと、標高差で700m登らんといかんのです。頑張るしかないようです。シールをつけたまま下り、さあ、登りモードに切り替えです。アルペンルートの弥陀ヶ原の広大な雪原の向こうには大日連山から立山連峰、もう少し高度をあげると、剣の先っぽが、毛勝連山が白く輝いています。
 でも、だんだん疲れてきました。立ち止まる間隔が短くなってきたのが自分でもよくわかる。体力不足を痛感!さらに、1,756mピークの手前では尾根が数メートルと細く、両側は切れ落ち、クトーをつけて登るも、部分的に表層雪崩を引き起こすなどなど、結局スキーを脱いで両手に持ち、つぼ足でクリアしました。もっと早くつぼ足にすれば、こんなに苦労しなくても済んだかもしれません。

弥陀ヶ原の向こうに立山連峰 △1,756mからの鍬崎山の雄姿

△1,756mで時間は12:07。今回はピークは諦めました。とりあえず制限時間を午後1時にして、結局標高1,800mまで到達できました。あと、290mほど、まだ、ピークは高く見えます。ここで、待ちに待ったビールを開けてのどを潤します。そのおいしいこと。
 さあ、滑降に移ります。ここで注意!3月にもなると雪庇など雪面に割れ目も生じ、それが新雪に隠れているとたちが悪い。落とし穴にはまらないように。でも、落ちてしまったら大変、助けてくれる人のいない単独行は怖いです。
 このルートは基本は北向き斜面であり、緩急ある尾根を、時折底付きながらも新雪パウダーを楽しめました。ぼくら2人しか入山者はなく、まっさらです。

期待どおりのパウダーに満足 まっさらな新雪斜面

 大品山までシールで登ったあと、粟巣野スキー場へ向けて最後の滑降です。時間は午後3時を廻りましたが、北向き樹林帯のコースはまだまだパウダーで一杯です。頂上までは行けなかったけれど滑りは十分堪能させていただきました。のぼりに怖かった貯水池の尾根も雪もゆるみ難なく通過し、送水管横の斜面からスキー場に滑り込みました。

だから山スキーやめられない!

 このコース、日帰りとしてはややハードですが、その頑張りに十分に応えてくれる実に魅力的なコースです。ボクらも是非来年もう一段力つけてチャレンジしたいと思っています。

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