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リウマチとともに
◆駅DE車いす・リウマチャーの旅(帰り3)
■串本駅
さて、旅の終わりの串本駅。列車を降りると、車いすを用意した何人もの人が待機してくれていた。見知った顔もある。「すみません、よろしくお願いします」と言いながら、内心ドキドキ。なんと、車いすはホームをまっすぐ陸橋の方へ進んで行くではないか。「えっ、ここを上るんですか?」「そうです」
気がつくと、右に2人、左にも2人、後ろに1人、計5人の男たちがいて、車いすをヨイショと持ち上げた。男たちをいうのは、制服を着た駅員さん以外に私服の人が数人混じっていたからだ。
この駅は数年前に民間委託されてJR職員がいない。現在働いている人の数も、JR当時よりうんと減っている(たぶん2人体制)。明らかに車いすに対応するために、臨時に駆り出された人たちであることが見て取れた。
5人が力を合わせながら、普通の住宅の3階分に相当する高さの階段を上っていく。車体のどこかが階段に当たっているのが身体に感じられるが、不安感はなく、気の毒な気持ちでいっぱい。日曜日だからか前後に列車を降りた人が大勢いるのも、少し気恥ずかしい。
階段を下りると、車いすを押す人は1人になっていた。普段出入りのない荷物運搬用の通路からスロープを通って、駅の外へ。「おかげで今回は本当に楽な旅行ができました。ありがとうございました。」と、心をこめて駅員さんにお礼を言う。
串本駅の場合、車いす利用者に慣れている様子ではなかったが、一応は親切に対応してもらったように思う。しかし、人手がなく非番の人まで夜間に駆り出されることは、決して歓迎されていないだろうと想像がつく。
問題はあの陸橋しか設備がないということ。不自由な者は苦痛をこらえて階段をのぼりおりし、それさえできない人は、鉄道による旅行を断念するしかない。それに対してとりあえず今は、マンパワーというJR側の方策しかないわけだ。「障碍者が旅行することが迷惑」ではなくて、障碍者の利用を念頭におかずにきたこれまでの公共交通機関のあり方がおかしかったのだと、気づいてくれるだろうか。
友人の車で自宅へ向かいながら、なかなか思いきった外出の機会が持てなかった私、貴重な経験をさせてもらったと、改めて思った。話に聞くより、まず実体験。田舎のリウマチャーは、ネット仲間のおかげで「駅DE車いす」に開眼。これからの旅行に大いに生かせるだろうと、実感している。
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(串本駅以外の写真は、Dさんより提供していただきました) |
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