10kHzの歪率が、100Hzおよび1kHzの歪率と比較して悪くなっていますが、これは100Hzと1kHzが30kHzまでのLPFを歪率計に掛けているのに対して、10kHzは全帯域(<300kHz)で測定しているからです。

LPFを掛けた理由は、できるだけスイッチングノイズ(スイッチング周波数は約38kHzです。)に影響されずに高調波歪率を測定したかったからです。一般的に測定器で測る全高調波歪率とは、ある周波数の正弦波をアンプに入力し、その周波数の出力信号と、出力信号からその周波数をノッチフィルタによって取り除いた部分との比を百分率で表したものです。そもそもは、アンプの出力信号からその周波数そのものと、高調波成分とを比較して、アンプのリニアリティを評価する指標として考えられたものですが、高調波成分だけ比較するのではなく、高調波+雑音を比較するのが一般的になっているため、雑音が多いと歪率が悪くなるという結果が出てしまうのです。

1kHzの信号に対して、30kHzのLPFであれば30次高調波までその帯域に入りますが、10kHzの信号に対しては、3次高調波までしか含まれませんから、高調波歪率を評価したということにはならないと考えましたので、10kHzの信号に対しては、300kHzまでの全帯域で測定したというわけです。その結果、10kHzの測定結果だけ他の周波数よりも高く出ていますが、100Hzや1kHzの測定値も全帯域で測れば、10kHzの結果とほとんど同じでした。ということは、10kHzの歪率もスイッチングノイズの影響がなければ(小さければ)100Hzや1kHzの歪率とほぼ同じ結果が出ると思われます。

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