NFBを掛けない状態でのドライブ段までとスピーカ出力の高域特性の比較です。今回の半導体ドライブ回路では8.2kΩの負荷抵抗で動作させていますが、ご覧の通り450k〜500kHzで−3dBと優れた高域特性を確保しています。

一方スピーカ出力の高域特性は250kHzあたりでピークを持っていますが、これは今回使用した出力トランスが結構凝った分割サンドイッチ巻をしているためではないかと思われます。また、出力段がビーム管であるため内部抵抗が高く、トランス本来の特性がより目立つ結果になっているということもあります。これはタムラ製の出力トランスの多くが持つ特徴の様です。誤解の無い様に申し添えておきますが、高域にピークがあるから良いとか悪いとか論じているのでは決してありません。このトランスも各方面で高い評価を受けており、こういった特性もトランスの個性と捕らえるべきだと思います。

と、ここまでで疑問を持たれた方がもしかして居られるかも知れません。実は上のグラフは、私がずぼらをしてNFBループの配線を外す代わりに出力管を抜いた状態で測定したグラフです。そして、下がNFBループを外して、出力管を動作させて測定したグラフです。

最初のグラフと比較すると、ドライブ段までの高域特性が悪くなっているのがよく分かります。これは出力段の入力容量の影響だと考えられます。そしてドライブ段の高域特性のカーブがきれいに落ちておらず少しゆがんでいることから出力段の入力容量が、出力段の負荷であるトランスの高域特性の影響を受けていることが分かります。それにしても出力段の入力容量(およびミラー容量)の影響が大きいのには驚きます。

この測定ではオシロスコープのプローブが持つ容量分(14pF〜20pF程度)が出力段の入力容量に並列に入っていることになりますので、そのために少し特性が悪くなっている(実際にはもう少し高域が伸びている)筈ですが、恐らく大きな影響は無いと思います。

スピーカ出力の高域特性にピークがある場合は、ドライブ段までの高域特性にも当然その影響が出ると考えられますから、あまりにきれいな最初のグラフが、ドライブ段の負荷である出力段を接続した状態ではないことが判ります。ずぼらをしたおかげで、こういった事も勉強することができました。

ただ、出力段を動作させた状態では、ドライブ段までと出力段とのスタガー比があまり取れていないように思われます。しかし発振等、不安定な動作は全くありません。そこでループ特性を取ってもう少し深く調べてみることにしました。

6BQ6-GTBプッシュプルアンプのページに戻る