バラック実験

本機の製作に先立って、バラック実験を行いました。初段が出力段を完全にドライブするに、初段に専用の電源が必要かどうか、そして ブートストラップが有効かどうか、というのがポイントです。

以下の回路でバラック実験を行いました。

まずは歪率です。出力段を充分ドライブするためには、ドライブ段の電源電圧を出力段よりも上げてやらなければ駄目ではないかと思って 100Vほどの別電源を用意したのですが、出力段と同じ電圧でもドライブが出来ているようです。

ブートストラップを掛けると歪率がかなり悪くなります。出力段のKNFが減ることと、利得が大きくなることでノイズが増えることが 理由ではないかと思います。また、ドライブ段のみ電源を高くしたときの歪率が悪いですが、これはドライブ段用の嵩上げ電源のリップルが 大きいためです。

目視でのクリップ点は、ブートストラップ無しでは両者とも約1.4Wで、ブートストラップを掛けると明確なクリップ点が 判らなくなりました。

次はF特です。ブートストラップを掛けることで14.3dB(1kHz)も利得が増えました。

次は出力インピーダンスです。1kHzでのダンピングファクタはブートストラップ無しで5.41、ブートストラップ有りで0.68となりました。 ブートストラップを掛けると、利得が増えた分だけ出力段のKNFが少なくなってしまうので、出力インピーダンスがかなり増加してしまい、 CSPPの利点がかなり薄まってしまいます。

120Hzでのグラフの乱れは、実験バラックの電源のリップルのためだと思うのですが、思いのほか影響を受けています。

最後に最終的な姿を予想して、NFBを掛けてみました。NFBは7.83dBで、DFは14.93(1kHz)です。 結局、本番では位相補償素子を100p→47pを減らして最終としています。

 バラック実験の総括

CSPP出力段の有力なドライブ回路であるCasComp応用回路と、ブートストラップの相性は必ずしも良くないというのが結論です。

ブートストラップ回路は、初段の電源電圧を実質的に高くするための非常に有効な手段ですが、利得の高い(あるいは高くすることが出来る) CasComp応用回路や多極管による差動回路と組み合わせると、PFBによるKNFの減り方が大きくなり、CSPPの利点の一つである 出力インピーダンスの低さをスポイルする結果となってしまいます。 もちろん利得が増えた分、オーバーオールのNFBを深くすれば帳尻が合うという 考え方も出来ますが、深いオーバーオールNFBを掛けようとしても、難しい場合も多いと思われます。 NFBなんてものは、少なくて済むなら 少なく済ませるというのが大原則でしょう。

それに対して三極管の場合は、利得が球のμを超えることは無く2〜3dBしか変わりませんので、出力インピーダンスの増加も相応にしか 変化しません。その割には最大ドライブ電圧の増加が大きいので、ブートストラップ回路が有効なのは三極管を使った時だと思われます。

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