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  黄昏れて



風もなく
音もなく
あたたかい雨が降っている
傘をさして歩くひとがいる

残された時間から
そっと自分をかばうように
傘を傾け 遠ざかる
そのひとの顔は見えない

ここに来るまでわたしも
どれほど回り道をしたことだろう
林の小径の木もれ陽や
きらめく水平線に心うばわれて
追いかけてきたのか
追いかけられてきたのか

時間の流れ去ったあと
空も海もひとつに
けぶらせる雨

わずかな町の灯りがにじんでいる
誰もが傘の下に小さな決意を抱いて
やがて帰りつくところへ
背中だけ見せ 去っていく













                                                      (2005年2月)

 
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