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  夕刻



あのひとのクルマが行ってしまった
熱い草むらから
2匹の猫がゆっくりと
目的をもった足どりで歩いてくる
物語は終わったのか 始まったのか
たしかなのは
飼い猫のもやと
そのボーイフレンドのノラ猫のにいちゃんが
お腹を空かせているということ
オリーブの若木の腕が屋根を押し上げて
ますます傾いでみえるアパートの
ドアを開けてもどる
半島の南端の
寄せては返す波のような日々
圧倒する海の青さに囲まれて
大気のなかにすべてを溶かせてしまえるわけでもない
追わないでいる時間が経ち過ぎて
気がつけば
夕刻が迫っている



















                                                       
(1996年7月)

 
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