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巣(1)
雨の降る日は
いちもくさんに帰ってくる
木造の4軒長屋
ドアの外
季節ごとに好きな花を植えてきたら
いつのまにか
庭らしいものが出来上がっている
今は梅雨 だから
あじさい狂い
出かける時に眺め
帰宅しては眺め
さびしい色に移っていく花を
日に幾度も誉めてやる
雨に濡れないで暮らすことはむずかしいのに
雨漏りもしない部屋で一応はいるという
わたしの奇妙な安堵感
おそらく誰にもわからないだろう
雨音よりも間近い
両隣の声に挟まれて
わたしは自分だけの笑いを
笑っている
(1989年7月)
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