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  路地



黄金色の
長く伸びた残照が
汚れた壁を浮かび上がらせている

たしかに共有した時間があった
こわれてしまった自転車バイクや
店じまいしたフルーツパーラーの看板
久しく使われていないらしい
ビニール製の新聞受け

重たい裏口の戸を
きしませて開ければ
そこに 何が見えるのだろう

ゴミ箱の上に
猫はいない
ふざけ合って駆けぬけてゆく
子供たちの姿もない

そこだけ
燃え尽きる寸前のように
かがやいている 一角















                                                      
(1993年11月)

 
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