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言葉と荷物
言葉は それでもなお
掬い上げることができるだろうか
わたしは 荷物をもっている
ではなく
わたしは 荷物である
という等式の海溝に
はまりこんでしまった人間を
せいぜい
生の岸辺から
まぶしい手を差しのばすことはあっても
荷物は
鉛色の魚になって
もう 重たい眠りに
身をゆだねていくしかないのに
(1989年11月)
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