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  いのち拾い


ホームレスから御殿の住まいまで
暮らしさまざまな
人間界
夕暮れの道端で
凍えそうないのちが一匹
声を限りに鳴いていた

捨てるのも 拾い上げるのも
人間どもの恣意で
目と目が出会いさえしなければ
心を鬼にできたのだが

狭いアパートの
さらに狭い台所の一隅に
トイレとえさ入れ
それで了解してくれるなら
わたしにだって飼えないことはない

手をさしのべられることはあっても
すがってくるものなど
かつて持ったことのなかったわたしには
後を追ってくる足音が
不思議でならないのだが

この頃は この小さないのち
振り返れば笑いながら逃げるのだ
あなたに飼われているわけじゃない
何にもないあなたと
一緒に暮らしているだけよ と







                                                      
(1993年2月)

 
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