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  のちの日のために



日向は少し暑さが残るけれど
木陰はすでに季節が移っていてどこかほの暗い
どんぐりが落ちているのだ

ここにも あそこにも
櫟がこんなにも大きく枝を広げて深い森をつくっていたなんて
気づかなかった
同じように白い布の帽子をかぶった
老女がふたり
姉は太っていてしっかりした足どり
妹はやせて不自由な体をかばっている
拾っても 拾っても
抱えきれないどんぐりが こんなに
役割も言葉づかいも呼吸も
おそらくふたりは童女のときも
そうであったように

森に陽がかげって
ふたりの持ち時間はあとわずか
──あ お姉さん待って

消えてゆくふたりを追うわたしは
時の流れにあらがうように
胸のなかで何度もシャッターを切りつづけている













                                                        (2001年10月)

 
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