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匂い立つ
のこぎりで挽かれて
生きているもののようにほとばしる
おもいがけない
木の香り
木っ端になった切り口からも
ひそかな呼吸がもれて
ほの暗い作業場の土間に
ときを越えた波紋が広がった
石臼をささえて
半世紀
家族をささえた働き手が
老いて
逝き
臼の重さから解き放たれて
いま役割を終える
桧の台
残したいことばの代わりに
いっそう激しく匂って
(2003年10月)
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