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一枚の絵
初夏の夕暮れ
島を結ぶ大橋がうす桃色の陽を浴びて
虹のように 窓に架かっている
管につながれて
ほとんど動かない母は
長かった人生の
仕上げに臨んでいるのだ
その傍らで父は
少し居眠りをしたり
窓の外に眼をやったり
それが最後の仕事のように
ただ座っている
きしんだことも もつれたことも
ふりほどいたことも 背をむけあったことも
みんな 炎が消えるように燃え尽きて
時折 枕元をのぞき込む
父の痩せた肩のあたりは
やはりひとつの意思のかたちをしている
(2001年2月)
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