|
冬のあかり
いつも待っていた
夏の夕暮れは戸口にたたずんで
寒さが急ぎ足で忍び寄るこんな季節は
こたつに入って 背中丸めて
声をかけると
振り返った顔に あかりが灯った
きょう一日の出来事を話す口調が楽しげなのは
ちいさな背伸びをしているから
遠い眼で
きのうの夢を繰り返し語るのは
逝ってしまった母が
まだこの家にいるからだ
そうして老いたからだは
日常の境目を往ったり来たり
娘は いっしょに暮らそうとは言えず
父は いっしょに暮らしたいとは言わず
明日があることだけを信じて
灯りのもとに向き合っている
(2004年12月)
|
|