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  リウマチとともに


転ぶ

               


 休日に掃除をしようとして、久しぶりに転んでしまった。掃除機の蛇腹状になったホースに足をとられ、あっと思った瞬間、体勢が立て直せず畳に尻もちをついたのだ。ドン、とお尻に衝撃があって、ゆるゆると仰向けに寝そべる恰好になった。
 おお、なんと畳に寝そべるなんて何年ぶりのこと。見慣れた我が家であるのに、低い位置から仰向けに寝て見る部屋がもの珍しく、しばらく眺めていた。
 そういえば、亡くなった脳性マヒの友人の詩に、道で転んでしばらく空を眺めていたというのがあったっけ。
 さて立ち上がるには、ここはちょうど良い部屋だった。隣室のキッチンとの間に30cmの段差がある。お尻を漕いで段差のあるところまで行き、よっこいしょ。
 
 リウマチ患者は、普通の高齢者よりも10年以上早く転倒する危険がある。私はそれより更に10年以上も早く転んでしまったという訳か。
 もっとも、転んだことはこれまでにも何度もある。自転車に乗せてもらっていたとき、また、自分でバイクに乗っていたとき(これは3回もある)、左膝に人工関節が入ってからは庭で1回。
 幸いというべきか、健康だった時期が14年間しかなかったからかもしれないが、転倒の瞬間、身体が何の防御反応も示さない。いつの場合も人形が投げ出されるように、手足を伸ばしたままで倒れ、それが骨折を免れることになっている。
 でも、これまでは充分に若かった。今はもう更年期のまっただ中。骨年齢は調べてもらったことがないが、病歴の長さと薬の服用期間の長さを考えただけでも、実年齢をはるかに上回ることは想像がつく。
 掃除機のコードは越えられるが、ホースは越えられないというこの微妙な差。でも、まだ掃除も洗濯も料理も自分でできる。この自信にかろうじて私の生活は支えられているようだ。

 
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