top
  リウマチとともに


フタが開けられない

               


 夜、コンタクトレンズのケアをしようとしたら、洗浄液が足りない。買い置きの新しいものを箱から取り出し、フタを開けようとする。いつもならほぼうまくいくのに、今夜は小さなキャップに密着させてかぶせてある硬いフィルムがはがせない。
 切り口を引っ張ってもだめなので、まずハサミを持ち出して切ってみる。隙間がないのでちょっとしか切れない。そのままでキャップが回らないかと、リウマチ友の会の「ビンふたまわし」(ゴム製)で覆ってねじってみる。が、すべってだめ。今度は友人が見つけてくれた、握り手のついたフタ開けのいちばん口径の小さいのをはめてみる。それでも、ボトルのキャップには大きすぎる。困った。それではカッターしかない。握力がないので危ないけれど、左手でボトルを支え、右手に持ったカッターで慎重にフィルムを切り裂いてゆく。
 フィルムがはずれたところで、ようやく自分の手でキャップを回すことができた。テーブルの上には、使った道具がいくつも転がっている。いったい私は、もともと何をしていたんだろう!。
 翌日まで待てるものなら、あくる朝勤め先へ持っていって誰かに開けてもらうという手もある。しかし今必要なものは、悪戦苦闘しても自力で何とかするしかないのだ。
 食べたい物のフタが開けられず、うらめしいときもある。フタが開いていれば格別食べたい物でもないかも知れないのに、開けることができない物はなぜかとても魅力的に見えて食べてみたい。
 ここ4,5年のあいだに、めっきりと手が使えなくなった。いつも身体のどこかで炎症が起きているから、下半身の関節がおとなしくしているときは、手指でリウマチが活動している。苦痛がようやく下火になった頃、よく見ると確実に指関節が変形し、握力が落ちている。
 同病の友人は、買ったデジカメのレンズバリア(フタ)が開けられないと失敗談を語っている。ひとり暮らしでなくとも、写真を撮りたいときそのたびに「フタ開けてちょうだい」と夫君に頼むのも、ちょっと辛いものがあるだろう。
 たかがフタ、されどフタ。フタが開けられなければ、物事が始められない。

 
 index back next