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  リウマチとともに


レンタルDE車いす・野外コンサートへ(2)

               


●コンサートへ

 駐車場の混雑が予想されるので早めに出発し、串本から約2時間の距離にある本宮町に到着した。思いがけなく一番近い位置にある駐車場が空いていて、ラッキー。
 車椅子をトランクからおろして、まずは高校生の姪が押してくれることになった。さっき通過するときに例の近道(農道)が見えていて、簡易舗装で問題なさそうだったので、そちらから進入することに。
 
 いったん国道脇に出て危険な車道の端を通り、農道へ。下りる坂道がけっこう急傾斜で乗っていても身体に力が入る。あとは田んぼに囲まれた楽な道。しかし、すぐに大社への参道に合流する。
 ひどい石畳の道。真ん中がでこぼこの石畳で、両脇が舗装されている。仕方なく端を通ることにしたが、幅が狭く路面は田んぼ側に傾斜していて車椅子が傾く。自分の確認の甘さを棚に上げて、心の中で、きれいな石畳とはこのことね、と悪態をつく。
 大鳥居をくぐると道が大きな砂利敷きにさしかかり、車椅子を押す手が弟に替わった。会場までいったい、どんな道が待ち受けているのやら。ものすごくバウンドしながらしばらく行くと、今度は小さめの深い砂利道。車のタイヤ跡が溝になって何本もついている。椅子の上の私は緊張感でいっぱい。押す人はもっと大変だろう。前へ進んでいるのが不思議なくらいだ。これでは砂漠のサバイバルレースみたい。
 ようやく、平坦な土の道に出た。草の生えた土の道がこんなにありがたいとは。そこまでくると、受付に向かって長い列ができていた。ゆるゆる進んだところ、今度は古びた石段がある。私は立ち上がり自力で歩行、からの車椅子は義妹がさげてくれた。

 受付係が、車椅子を見て言った。
「お体の不自由な方とご高齢の方には、あちらに椅子を用意しております」
なるほど、森の中の広場には、端っこにパイプ椅子が並んでいる。はぁ、ここまでの冒険に満ちた道のりを、みなさんどうやって越えてくるとお考え?
 開演まで会場の様子を眺めていると、100席ほど並べられた椅子に座る人は少なく、座っている人もほとんど障碍者や高齢者には見えない。椅子の配慮はありがたいにしても、それならもう少しだけ当事者の身になった対応があればもっとありがたかった。もしかしたら、何度も問い合わせをしたので、急きょ椅子を用意することになったのかもしれない・・・。
 もうひとつ、気がついたこと。特設ステージ脇に設けられた関係者用のテント、そのすぐそばに車が止まっていて別の道が通じているではないか。ここを通してもらえれば、難なく会場に入ってこられたはず。電話で、ほかに方法はないのですねと念を押したのに、ありませんという返事で。
 コンサートの帰り、私たちが通ってきた参道に進入している車を何台か見た。なぁんだ、通さないことはなかったのだ。
 
 ともあれ、何人もの人に背中を押されて実現し、楽しむことができたコンサート。車椅子での外出もこれで3度目だが、毎回おっかなびっくりの私はいい年をして頼りないことこの上ない。
 しかし、行動してみなければ、自分の働きかけの未熟さや、車いすで出かけることの大変さが見えてこない。これはひと夏の貴重な体験だと苦笑しながら、今後に生かすことを考えている。


 
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