オーディオ機器用自動測定ソフト FRAplusのご紹介

FRAplusは、米デジレント社のアナログディスカバリー(Analog Discovery)をコントロールして、オーディオ機器等の自動測定を行うためのPCソフトです。

FRAplusは、みやさん(miyaさん)が開発されたフリーウェアです。

このソフトは現在開発中ですので、ソフト仕様の変更の可能性があります。 新たに機能が追加されたり、仕様変更された場合には説明を追加、変更してこのページの内容を充実させてゆきます。

2018.12.25更新

☆目次☆

   ☆FRAplusの特徴

   ☆アナログディスカバリーについて

   ☆FRAplusのダウンロード、インストール、使い方

   ☆EUTの接続のしかた

   ☆測定アプリの使い方

   ☆分析アプリの使い方

   ☆Tips!

   ☆グラフテンプレートの演算式について

   ☆測定データ比較

   ☆オーディオ機器測定用アダプターについて

   ☆FRAplus開発のご協力のお願い

 FRAplusの特徴

○安価なアナログディスカバリーとフリーウェアの組み合わせで、コストパフォーマンス最高級のオーディオアナライザーシステムが構築できます。

○平衡入出力仕様の測定器ですので、不平衡仕様の機器のみならず、平衡仕様の機器や二次側巻線を利用してKNFを掛けているアンプ等でも測定が可能です。

○周波数スイープ機能(最大範囲1Hz〜10MHz)を使って、被測定機器(EUT)の周波数特性、位相特性、インピーダンス特性、歪率特性が自動測定できます。

○信号レベルスイープ機能を使って、機器の入出力特性、歪率特性が自動測定できます。

○測定アプリと分析アプリを相互に行き来しながら、短時間に多くの測定を効率よく行うことができます。

○分析アプリでは、グラフテンプレートを設定、編集することで、多彩なグラフを描画することができ、カーソル機能や正規化機能など、 グラフ描画ソフトに要求される機能を網羅しています。

○自動レベル設定機能により、EUTの出力が所望のレベルになるように発振器の出力を自動で調整することができます。

○連続運転を行うとEUTに負荷が掛かりすぎる場合など、測定インターバル(0〜10秒)を設定することができます。

 アナログディスカバリーについて

アナログディスカバリーは、USBオシロスコープをメインとする測定器(なのかな? そもそもが廉価ですし、教育向けとか、 アメリカの生徒向けには更に安い価格で販売されてますので、本来は教材なのかもしれません。ま、本格的な測定器ではないような気がします。)で、 日本ではアナログ回路開発の万能ツールとして紹介されており、PCとUSBケーブルで接続して使用する形態のものです。電源はUSBから給電され、2chのオシロスコープ、 ファンクションジェネレーター、16chのロジックアナライザー、パターンジェネレーター、AC電圧計、スペクトラムアナライザー、ネットワークアナライザー等、 多くの機能を持ちます。

 秋月電子のWEBサイトより転載

アナログディスカバリーは、デジレント社のWEBサイトからダウンロードするWaveFormsというPCソフトでコントロールするのが本来の使い方です。 非常に多機能でソフトウェアもよく出来ていますが、あまりに多機能過ぎて?オーディオ機器の評価に使うには、やや隔靴掻痒なところや 足りない機能があるように思います。 日本では秋月電子ストロベリーリナックス等から購入することができます。

アナログディスカバリーは上の写真のように、非常にコンパクトで、本体には2列のヘッダーコネクタ端子が付いているだけですので、 これだけではEUT(DUT)を接続することはできません。短いコネクタケーブルが付属していますが、主にブレッドボードに接続するためのものですから、 何らかのアダプターを作る、あるいは購入する必要があります。筆者は下の写真のようなアダプターを製作して使っています。このアダプターについては後ほど説明します。

 FRAplusのダウンロード、インストール、使い方

FRAplusは現在開発途上です。したがって公開されているバージョンは、まだ不具合点がありますが、一通りの測定はできるようになっています。 できるだけ多くの人に使っていただいて不具合レポートや感想、意見、を寄せていただき、より早く、より良いソフトが完成することを目的として公開しています。 ぜひ皆様のご協力をお願いします。

FRAplusはウィンドウズXP以降のPC上で動きます。なお、WaveFormsをインストールされていないPCは、まずWaveFormsを先にインストールしてください。

FRAplusは下のURLからダウンロードが出来ます。なお、ダウンロードされたソフトによって如何なる不具合、障害等が起こったとしても開発者ならびに筆者は 一切の責任を負いません。この点についてご理解、ご了承いただいた方のみソフトのダウンロードを行ってください。

  

https://www.dropbox.com/s/jdjgp4lfwurbrd7/FRAplus-1.40.0050.zip?dl=0

  

注:2018/12/25にバージョンアップされ、Ver.1.40.0050になりました。

【Version 1.40.0050】 2018/12/25

2台以上の測定ハードウェアが接続されている場合、起動時そのいずれを使用するかをリストより選択する機能を追加した

但し起動可能な測定アプリは1つだけ。

接続時にエラーが発生した場合、常に「Unknwon Error.」となり、正しいエラーメッセージが表示されない不具合を修正した。

分析アプリ、測定アプリ共、デスクトップ画面の可視領域の外にドラッグしたままアプリを終了すると、可視領域内に移動させる術がない為、 起動時に表示位置が可視領域外である場合は、強制的に画面の中央に移動する処理を追加した。

  

これまでの更新内容の詳細はこちらのページ↓を参照ください。

http://blogs.yahoo.co.jp/xeres0512/18233689.html

  

ダウンロードが終わったら圧縮ファイルを解凍し、セットアップのアイコンをダブルクリックして、ソフトをインストールしてください。インストールが終わると、 FRAplusの測定アプリと分析アプリが使えるようになります。

FRAplusの使い方ですが、まずアナログディスカバリーを付属のUSBケーブルでPCに接続し、測定アプリ(FRAmeas)を立ち上げます。

測定アプリは、アナログディスカバリーとの通信が確立できないと立ち上がりません。一方、分析アプリはスタンドアロンで使うことができ、csv形式のファイルを 読み込むことができますので、FRAplus以外の測定器で測ったデータを読み込ませてグラフ化することが可能です。FRAplusのデータと他の測定器の データをひとつのグラフ上で比較することなんかもできちゃいます。

測定アプリが立ち上がったら、測定に必要な各種設定を行ってから実行ボタンを押してEUTの測定を行います。その後、グラフ表示ボタンを押すと分析アプリが起動され、 測定アプリで測定したデータをグラフ化します。分析アプリの測定ボタンを押せば、再び測定アプリが呼び出せますので、両ソフトを行ったり来たりしながら測定、 グラフ化を重ねていくという操作手順になります。

 被測定機器(EUT)の接続のしかた

アナログディスカバリーとEUTの接続例を下図に挙げます。

インピーダンス特性とクロストーク特性の測定以外は、上図の上側の接続図となります。CH1とCH2は入れ替えても問題はありませんが、 以降の説明では接続例の通りに配線した場合について記述します。もしCH1とCH2を入れ替えて使われる場合は、以降の説明のCH1とCH2を入れ替えてご理解ください。 インピーダンスの測定には電流検出抵抗が必要となりますので、上図の中央の接続図のように配線してください。インピーダンス測定の場合は、 CH1とCH2の極性は頓着しなくても構いません。電流検出抵抗は1Ω〜1kΩ程度が適当です。クロストーク特性は上図の下側の接続図となります。

 測定アプリの使い方

以下の説明は、対象バージョンが古いため、最新の測定アプリの仕様と違う場合があります。 Ver.1.20.0024より、測定アプリのヘルプメニューから取扱説明書をAcrobat Readerで参照できるようになりましたので、詳しい説明はそちらを参照ください。

初めて測定アプリを立ち上げた時には較正データがありませんので、アプリ画面の一番上に(較正データ無し!)と表示されます。

まず、設定(S)メニューから較正(C)を選んで、較正を行います。

較正は、上図のように、OSC(AWG1)とCH1、CH2をスルーケーブル接続してから較正開始ボタンを押して較正を開始します。終わったら、閉じるボタンを押して ポップアップウインドウを閉じます。

さて、現在のバージョンから、測定に関する設定が追加されました。

入力CHの信号レベルをどのような方法を用いて算出するかを指定することが出来ます。 以下に指定可能な測定メソッドの種類と、その詳細を記述します。

○真の実効値(AC RMS)

入力CHのサンプリングデータからDC成分を除いた信号の実効値を測定値として使用します。 測定値には測定信号の他、系のノイズなど全てが含まれます。 内蔵発振器を用いた測定の他、外部発振器を用いる場合など、測定周波数が未知の場合でも使用できます。

○周波数スペクトルから算出(測定周波数に同調)

入力CHのサンプリングデータをフーリエ変換し、測定周波数と、その高調波成分に該当する信号の実効値を測定値として使用します。 系のノイズの測定信号に対する影響を極力排除することが出来ます。 内蔵発振器を用いて測定する場合のみ使用できます。

○周波数スペクトルから算出(自動同調)

入力CHのサンプリングデータをフーリエ変換し、最も大きなレベルの周波数を基本周波数とし、当該周波数の信号と、 その高調波成分に該当する信号の実効値を測定値として使用します。 系のノイズの測定信号に対する影響を極力排除することが出来ます。 内蔵発振器を用いた測定の他、外部発振器を用いる場合など、測定周波数が未知の場合でも使用できます。

測定の平均化回数を指定できるようになりました。時間はかかりますが平均化回数を増やすことで繰り返し精度を向上させることができます。 1〜10の範囲で指定可能ですが、平均化回数を増やしすぎると極端に測定時間が長くなります。

以下、測定アプリの画面について説明します。

プリセットは、測定の項目設定をまとめたもので、デフォルトでいくつか用意されていますが、これらに加えて、設定を変更して名前を付けて保存することが出来ます。

出力設定では、OSC(AWG1)の設定を行います。スイープモードは、周波数スイープとレベルスイープの2つから選択します。

周波数スイープを選択した場合は、スイープする下限周波数と、上限周波数を設定します。周波数は1Hzから1MHzまで1Hz刻みで設定できます。 測定によく使用する1Hz〜1MHzと、20Hz〜20kHzはボタンひとつで設定することができます。

次にOSC出力レベルを設定します。-80dBV〜+10dBVまで、0.5dB刻みで設定ができます。出力レベルは自動設定が可能で、自動レベル設定のボタンを押すと、下の画面が ポップアップします。

 

自動レベル設定の画面の設定を行って実行ボタンを押すと、レベル設定が行われます。 参照入力CHはCH2を選択し、レベル設定を行う周波数を選択します。 目標レベルというのは、EUTの出力レベルです。目標出力レベルになるようにOSC出力を調整します。例えば18dBの利得を持つアンプの、 1Vrms出力の時の周波数特性を測る場合には、発振器の出力を-18dBVに自動で合わせてくれるというわけです。便利でしょ? 設定通りにレベル調整ができれば自動調整完了のメッセージが出ますが、場合によっては設定が出来ないことがあり、その場合は自動レベル調整を中止します。 自動設定が終わったら閉じるボタンを押し、ポップアップ画面を閉じます。

 

スイープ方法は、現在ログスイープで固定されています。ダウンスイープのチェックを外すとスイープアップ(低い周波数から高い周波数へのスイープ)になります。

 

測定点数では、指定された範囲内で何点の測定を行うかを設定します。3〜1000まで設定することができます。

測定インターバルは、連続運転するとアンプ等に負担が掛かる場合等に、ひとつの測定点から次の測定点に移るまでのインターバルを設定します。 0〜10秒まで0.1秒刻みで設定することができます。

 

スイープモードの設定でレベルスイープを選択した場合は、スイープする下限レベルと、上限レベルを設定します。レベルは-60dBV〜+10dBまで設定できます。 -60dBV〜+6dBVと、-40dBV〜0dBVはボタンひとつで設定することができます。

 

周波数の設定では、測定する周波数を設定します。1Hz〜1MHzまで1Hz刻みで設定することができます。

スイープ方法は、現在ログスイープで固定されています。ダウンスイープのチェックを外すとスイープアップ(低いレベルから高いレベルへのスイープ)になります。

 

入力設定では、CH1とCH2の入力アッテネータの入り切りを設定します。デフォルトで自動調整となっており、特別な理由が無い限り自動調整のままで測定します。

表示設定では、測定しながらリアルタイムで簡易的なグラフを描くためのグラフテンプレートを選びます。グラフテンプレートについては後ほど説明します。 なお、リアルタイムのグラフプロット機能はまだ実装されていません。

設定が終わったら、実行ボタンを押して測定を開始します。測定中は画面右下の測定データの欄に測定されたデータが表示されます。測定を開始後、中止する場合は 中止ボタンを押します。測定は低い周波数ほど時間が掛かります。

測定が終了したら、グラフ表示ボタンを押して、分析アプリを立ち上げ、測定データを転送します。

 分析アプリの使い方

測定アプリから分析アプリを起動すると、測定アプリから渡されたデータがグラフ化されます。

上図は測定アプリで測定した後、グラフ表示ボタンを押して分析アプリを立ち上げた直後の画面です。測定アプリから転送されたデータは、 系列という名前でグラフの凡例に表示されます。ではまず、系列名を入れてみます。画面下の中央右にある系列名の窓に、名前を書き入れます。

そして、適用ボタンを押すとグラフ内の凡例に入力した名前が入ります。

次はグラフのタイトルを入力してみます。画面上の右端のタイトル編集ボタンを押すと、名無しのグラフの部分が編集可能になりますので、タイトルを書き入れます。

編集終了ボタンを押してタイトル編集を終えます。

注意: 現在のバージョンから、グラフエリア内のテンプレート名は、グラフタイトルに置き換わりましたので、 グラフをクリップボードへコピーした時にグラフタイトルが入るようになりました。

さて、このままではグラフが見にくいので、見やすくしましょう。 FRAplusでは、測定データを選択されたグラフテンプレートの内容にしたがってグラフ化します。 グラフテンプレートにはどのようなグラフにするかという項目設定があります。  デフォルトのままでは見にくい場合は、テンプレートの内容を編集して所望のグラフにしてください。

画面左下の、グラフアイコン+[周波数特性(CH2-CH1)]とあるボタンには、現在使われているテンプレートの名前が表示されています。 このボタンを押してテンプレートの編集を行います。

現在のテンプレートはよく使う標準テンプレートですので、ここでは新たなテンプレートを作ります。 「テンプレートの選択」→「新しいテンプレートの作成...」を選択します。

そして新しい名前を入力して、OKボタンを押します。

新しいテンプレートですので、中身は何もありません。が、最初のテンプレートから変更するのは、周波数の範囲を20Hz〜20kHzに変更するのと、 「縦軸2の設定を有効にする」のチェックを外すだけです。最後にOKボタンを押して設定ウインドウを閉じます。

上の画面が新しいテンプレートでのグラフです。ここまでのデータを保存します。画面上部左端のファイルボタンを押して、名前を付けて保存(A)を選択し、 ファイル名を入力して保存します。

それでは画面上部、中央左の測定ボタンを押して測定アプリに戻り、測定の続きを行います。

そして次の測定結果のグラフを、今のグラフに重ねてみます。

この時、測定アプリの表示設定のグラフテンプレートの変更ボタンを押して、 先ほど保存したテンプレートを選択してから、分析アプリに渡します。グラフテンプレートは測定データ系列毎のプロパティではなく、 データ全体に対して唯一のプロパティですので、重ね書きをすると最後に結合した系列のグラフテンプレートにて、 それまでのグラフテンプレートが上書きされてしまいますので気をつけてください。

グラフの表示方法のウインドウの表示先の選択で、先ほど保存したファイルを選択して、OKボタンを押します。追加したグラフの系列名は「中域」とします。

ウーファーとスコーカーの能率が違うため、平坦部の利得が違いますので、中域のグラフ正規化してみます。正規化は、Aカーソルを正規化の基準点に置いて行います。 まずは中域の系列タブが選択された状態で、画面上部の左部にあるカーソルボタン押します。すると数のようにサブメニューが出てきます。 サブメニューのカーソル表示なしの部分にポインタを持って行き、偏差(dB)を選択します。これでポインタがAカーソルに変わりますので、 交点をグラフ上の基準点とする場所に持って行き、マウスの左ボタンを押します。

次に、カーソルボタンの右横の正規化ボタンを押します。

今は中域(の系列)だけを正規化したいので、何も変更せずに、OKボタンを押します。

これで、上のグラフのように中域のグラフが正規化され、平坦部が低域と同じになりました。それではBカーソルを出して、低域と中域のグラフの交点、 つまりクロスオーバー周波数がどれくらいかを見てみましょう。

 

Bカーソルの指示から、クロスオーバー周波数が約500Hzで、-6dBポイントでのクロスであることが分かります。グラフが小さいので拡大して見てみましょう。

画面上部、正規化ボタンの右横の軸範囲ボタンを押して、設定ウインドウをポップアップさせます。

上の画面のような感じでしょうか? 設定を変更して、OKボタンを押します。

クロスオーバー部分を拡大すると、カーソルのズレがよく分かりますね。改めてBカーソルを交点に持ってゆくと、クロスオーバー周波数は492.2Hzとなりました。

さて、それでは画面下部のボタンの説明をしてゆきます。

まず、グラフテンプレート右横の、色ボタンを押すと、系列のグラフ線色を変更することができます。変更する場合は、まず系列を選んでください。

色ボタンの右横の線種ボタンでは、実線のグラフを点線または一点鎖線に変更することができます。

系列名の右横の凡例表示ボタンで、凡例の表示位置を変更することができます。

画面下部の右端のボタンで、グラフの削除ができます。 削除したい系列を選んで、ボタンを押してください。

グラフの線や色の変更をしたい場合は、画面上部左端のファイルボタンを押して、設定(N)を選択します。

すると、グラフ設定のサブウインドウがポップアップします。

グラフを画像として残したいとき等には、グラフエリアでマウスを右クリックします。すると以下のような画面が出ますので、 クリップボードにグラフをコピーできます。

 Tips!

○普通のオーディオアナライザーだと、測定項目を選んで測定しますが、FRAplusは一つの測定ポイントで、入力チャンネルの信号レベル、位相差、 歪率を一度に測定して保存します。したがって、周波数スイープで測定を行い、周波数特性のグラフを描かせたとしても、テンプレートを変更して縦軸を歪率にすると、 もう一度測定することなく周波数対歪率のグラフが得られます。同様に、信号レベルスイープで入出力のグラフを描かせた場合でも、 テンプレートを変更するだけで出力対歪率のグラフを得ることができます。

○周波数スイープさせたとき、100Hzとか1kHzなどのキリの良い周波数を測定ポイントに入れたいときがありますよね。 例えば1Hz〜1MHzの範囲で周波数スイープをさせた場合、測定点数がデフォルトの100点のままだとそれらの周波数が測定ポイントに含まれません。 1Hz〜1MHzですと6ディケードですから、測定点数を6の倍数+1、例えば61とか85、97などに設定すればOKです。 例えば10Hz〜100kHzの場合は4ディケードですから、4の倍数+1の測定点数となります。

○測定アプリで測定すると、測定データの窓にデータが見えますよね。このデータをマウスでドラッグしてやれば、クリップボードにコピーすることができます。 これをメモ帳などにペーストし、csv形式で保存すればエクセルなどの表計算ソフトに読み込ませることができます。

○FRAplusにはイコライズ機能があります。イコライズ機能というのは、測定に使うケーブル類が持つ周波数特性をキャンセルする機能です。 ケーブル類の周波数特性がフラットでなければ、EUTを接続して得られた周波数特性は、EUTだけではなく、ケーブル類を加えた総合周波数特性を測定することになり、 誤差を生じます。そこでEUTを測定する前に、EUTを接続せずにケーブル類だけを直結して周波数スイープさせて特性を測定して記録し、 総合周波数特性から引いてやればEUTだけの周波数特性を得ることができるわけです。

○Ver.1.20.0020から測定メソッドが選べるようになり、これまでのAC RMS(真の実効値)に加えて、周波数スペクトルから算出したものを選べるようになりました。 これはノイズの中から基本波を掘り出すことが出来ますので、アンプのクロストーク特性を測るときに、効果があります。

上のグラフは、拙の自作アンプのLchからRchへのクロストーク特性のNFのFRA5096での測定値とFRAplusの測定メソッドを変えて測定したものを比べたものです。 赤いグラフは測定メソッドが真の実効値のものですが、青色の点線(APのオーディオアナライザーで測定したRchのノイズフロア)と平坦部がほぼ一致しています。 このように真の実効値だと、アンプのノイズフロアが測定限界点となり、クロストークはアンプのノイズフロアよりも低いということしか分かりません。しかし、 柿色のフーリエ変換をしたものだと、FRA5096ほどではないにせよ、アンプのノイズフロアよりも低いクロストークを捕らえることができる可能性があることが分かります。

○アナログディスカバリーの入力チャンネルは平衡入力回路になっていますが、オシレータ出力は不平衡回路です。 平衡入力回路のアンプの特性を測定する場合は入力端子の片側がアースに落ちますので、不平衡での接続となります。 が、周波数特性や入出力特性、歪率特性などは特に問題無く測定できると思います。気をつけなくてはいけないのは、インピーダンス特性を測るときです。 アンプの出力が平衡回路のときは、出力端子のプラス側もマイナス側もアースに落としてはいけませんので、不平衡回路のオシレータ出力を接続するときには、 アナログディスカバリーのアースとアンプのアースを接続してはいけません。接続せずに浮かせたままで測定してください。 出力が平衡でなくても、出力トランスの二次側巻線を使ってカソード帰還を掛けているアンプは、同様にどちらの出力端子もアースに落とせませんので、 平衡出力のアンプを測定する場合と同じ注意が必要です。筆者のように平衡出力回路を搭載したアダプターを使う場合は、 アンプが不平衡回路であろうと平衡回路であろうと気にせず測定することができますので、うっかり屋さんは平衡出力回路にしておいた方が無難かもしれません。

 グラフテンプレートの演算式について

グラフの縦横軸に適用する値は、FRAplusで扱う項目のいずれか、あるいは複数を変数とする、予め定義された演算式を適用することによって求められます。 演算式はグラフテンプレートの項目として存在し、描画するグラフの種類に応じて適切な演算式を指定することにより様々なグラフの描画を可能です。 演算式には「定数」、「変数」、「演算子」、「関数」、そして「括弧()」を使用することができます。

以下に演算式を較正する各要素について説明します。

●定数: 値が固定されて変化しない数を表します。 例えば、DBV2V(CH2-CH1)*10という式において、"10"のことを定数と呼びます。

FRAplusでは実数に加えて、以下の定数が使用可能です。

PI : π(円周率)

●変数: 式を評価するときに初めて具体的な数値が決定する数を表します。 例えば、DBV2V(CH1)という式において、"CH1"のことを変数と呼びます。

FRAplusでは以下の変数が使用可能です。

FREQ : 周波数を表す変数(単位はHz)

CH1 : CH1入力の測定値を表す変数(単位はdBV)

CH2 : CH2入力の測定値を表す変数(単位はdBV)

PHASE : CH1入力とCH2入力の位相差を表す変数(単位はdeg)

THD1 : CH1入力の全高調波歪率を表す変数(単位は%)

ODD1 : CH1入力の奇数次高調波歪率を表す変数(単位は%)

EVN1 : CH1入力の偶数次高調波歪率を表す変数(単位は%)

THD2 : CH2入力の全高調波歪率を表す変数(単位は%)

ODD2 : CH2入力の奇数次高調波歪率を表す変数(単位は%)

EVN2 : CH2入力の偶数次高調波歪率を表す変数(単位は%)

● 演算子: 各種の演算を表します。加減乗除と平方、計5種類の演算子が使用可能で、それぞれ「+」、「-」、「*」、「/」、「^」記号を用いるものとします。

● 関数 : 次の関数を使用することが可能です。

DBV2V : 続く()の演算式により与えられる値を常用対数とみなし、十進数に変換します。

LOG10 : 続く()で括られた式の常用対数を求めます。

SQRT : 続く()で括られた式の平方根を求めます。

● 括弧(): 括弧は演算の順番を明示的に変更し、()内から演算することを指示します。入れ子になった()は、最も内側の()から評価されます。

以下に演算式の例を示します。

CH2のCH1に対する利得を求める式 : CH2-CH1

CH2のdBV単位の測定値をVに変換する式 : DBV2V(CH2)

10Ωの電流検出抵抗を使用したときのインピーダンス(Ω)を求める式 : DBV2V(CH2-CH1)*10

8Ω負荷時の電力(W)を求める式 : DBV2V(CH2)^2/8

注意: これまで、POW10(CH1/20)などと表現していた式は、DBV2V(CH1)として置き換えられます。演算式の評価はグラフ描画時に測定点の全てに対して行われるため、 測定点が多いと、÷20の評価が無いだけでも描画速度が随分異なってきます。演算子POWは使用可能ですが、DBV2Vの方が有効ですので説明文から省きました。

 分析アプリへのcsvファイル入力について

分析ソフトはcsvファイルを読み込むことが出来ますので、FRAplus以外の測定器で測った測定値を読み込ませて、グラフを描かせることができます。

csvファイルは、列が下に示す順番になっている必要があります。

FREQ,CH1,CH2,PHASE,THD1,ODD1,EVN1,THD2,ODD2,EVN2

上記の項目は、グラフテンプレートの項で説明した変数です。 最低限FREQ,CH1,CH2の3列は入れてください。

例えば、別の歪率計で測った測定値をグラフにする場合、普通は出力電力と歪率のデータしか無いと思います。その場合にはデータの無い列 (FREQ, CH1, PHASE, THD1, EVN1, ODD1)には適当な数値を入れておいてください。

例えば、WaveFormsのネットワークアナライザーで測定した周波数特性の測定値をグラフに描かせたいときには、エクスポート機能でcsvファイルを出力し、 エクセル等で編集します。まず測定値より上の行を削除します。エクスポートされたcsvファイルのデータの列は、周波数、CH1の測定値、CH2の測定値、 位相差の順番に並んでいますが、CH2のデータはCH1との差分が出力されていますので、分析ソフトの演算式は、CH2のみとします。 FRAplusではCH1、CH2それぞれ測定した値がそのまま分析ソフトに渡され、グラフテンプレートでCH2-CH1を計算してグラフ化しますが、 WaveFormsの出力では既にその計算がされた数値がCH2として出力されているわけです。したがって、FRAplusで測定したデータとグラフを重ねたい場合は、 演算式が同じになるように、CH1の列のデータを全部0(ゼロ)にしてください。

 測定データ比較

拙の自作アンプをFRAplusで測定したデータを 紹介します。比較のため、職場の測定器で測ったデータと一緒にグラフ化しました。なお、リンク先のアンプ紹介PDFにも測定データを載せていますが、 モノラル2台のうちのどちらのデータなのか、今となっては定かではありません。以下のデータはもう一度同じ測定器で測り直したものです。

まずは周波数特性データの比較です。比較データは、(株)エヌエフ回路設計ブロックの周波数特性分析器、FRA5096という測定器で測ったものです。 8Ω負荷1kHzで1Vrms出力という条件で測定しました。FRAplusには自動レベル設定機能がありますから、レベル設定はとっても楽です。  茶色の線がFRA5096でのデータなのですが、周波数特性、位相特性とも全く重なってしまいました。 FRA5096は約250万円もする測定器なのですが、 FRAplusの測定結果はFRA5096と全く遜色が無いってことですね!

次は出力インピーダンス特性です。電流検出抵抗は10Ω、信号レベルは1Vrmsで測定しました。これは若干、両者に差が見られますが、ほんのわずか?です。

入出力特性です。8Ω負荷1KHzで-40dBVから0dBVまでレベルスイープさせて測定しました。比較データは、米オーディオプレシジョン(AP)社のポータブルワンという オーディオアナライザーで測定したものです。この測定も両者のグラフはほぼ重なっています。FRAplusは1回のレベルスイープの測定で、 入出力特性と歪率を一緒に測定できますが、APのアナライザーは別々に測定しなければならず、手間が増えます。 また、スイープ速度もFRAplusの方が速いので測定がより短い時間で完了します。

8Ω負荷、100Hzでの全高調波歪率特性です。これもAPのアナライザーと比較しています。

全高調波歪率の測定は、アナログディスカバリーの入力回路のS/Nがあまり良くないので、FRAplusにとって課題が多い項目です。FRAplusの 現在のバージョンの歪率の算出方法は、最大11次までの偶数次高調波と奇数次高調波の実効値の基本波に対する比率を計算し、その2つの実効値を高調波歪率としています。 したがって、THD+Nではなく、THDです。S/Nが十分に取れていれば、出力が大きくなるにつれて歪率は単純増加するはずですが、高調波成分がノイズに埋もれてしまうため、 APのアナライザーと似たようなカーブを描きます。

V1.20.0020以降では、ノイズフロアが下がったため、APのアナライザーの測定値に近づきました。歪率測定に関しては今後も改善を試みる予定です。

1kHzの歪率は、前述の通りFRAplusは上の入出力特性と同時に測定したものです。

100Hzと1kHzのグラフでは、出力が0.4W辺りで歪率が急に高くなり、段差のあるグラフになっていますが、この原因は今のところ不明です。概ね入力信号が0.1Vrmsで0.1%程度、 0.2Vrmsなら0.05%程度が測定限界(最低歪率)のようです。WaveFormsのスペクトラムアナライザーでのTHDの最低歪率もあまり変わらないようですから、 ここら辺りがアナログディスカバリーの限界なのではないかと思います。

 

歪率の算出方法は、現バージョンで色々なアンプ等の歪率を測定し、精度の把握をして、余地があれば改善してゆく必要があります。 歪率計をお持ちの方は、 FRAplusとの測定比較データを寄せていただけましたら、大変有難いです。どうか、ご協力よろしくお願いします!

 オーディオ機器測定用アダプターについて

上の写真は、筆者が使っているアダプターです。 RJ-45コネクタ(LANケーブルを接続するコネクタです。)に全ての入出力が立ち上がっており、あとは電源LEDが前面パネルに付いているだけのシンプルなものです。

みやさんと筆者はアンプ等に使うトランスを巻くのですが、プッシュプル用出力トランスの評価には平衡出力が必要ですので、 アダプターには平衡出力回路を搭載しています。しかし、その後、FRAplusでは使用していなかったアナログディスカバリーのAWG2を利用して、 ソフト的に平衡出力仕様にする機能が追加されましたので、追加回路無しで平衡入出力仕様にすることができるようになりました。

FRAplusと組み合わせて使うアダプターは、アナログディスカバリーの入出力端子を被測定機器に接続するためのものですので、 単に端子を並べるだけでも充分に使えます。ユーザーが使い易いように工夫をして製作していただければ結構かと思います。

FRAplusユーザーには、ご自分でこんなアダプターを作られた人もおられます。 そして、私が上の写真のアダプターの以前に作ったのはこんなのです。

とは言っても、自分でこれらのようなアダプターを作るのは難しいと思われる方もおられるだろうと思いますので、 上の写真のアダプターの進化型(こんな回路)を作るための部品を頒布しています。

FRAplusアダプターの頒布部品を希望される方は こちらのページに詳しいことを説明しています。

頒布中のアダプターの他、市販のキットを利用する事も可能です。ソフトンさんの フロントボックスキットは、アナログディスカバリーをオシロスコープとして使うのに便利ですし、安価ですのでお勧めです。

 

 FRAplus開発のご協力のお願い!

 

これまでは数百万円もする測定器を使わなければ自動測定は難しく、アマチュアアンプビルダーにとっては高嶺の花でした。が、アナログディスカバリーの登場で、 ガラリと状況は変わりました。もうすぐ誰でも手の届くところに近づいています。プロが使うには、若干精度に難のある部分があるかもしれませんが、 アマチュアにとっては十分な測定ができると思います。WaveFormsを使えば発振器、オシロスコープ機能等が使えますし、 あとはテスターがあれば自作アンプの評価が一通りできてしまいます。

というわけで、FRAplusの完成度を高めるために、できるだけ多くの方にさわっていただきたいと思います。そして、どんな些細なことでも結構ですので、 ソフトを使ってみたご感想、ご意見、不具合レポートなどを、筆者が運営しております 「ARITO's チョロQ」掲示板に書き込んでいただければと思います。この紹介ページについてのご意見、ご質問、ご要望、間違いのご指摘なども大歓迎です。 掲示板に入るには、UserIDおよびパスワードは半角小文字で「bbs」と入力してお入りください。これはスパム書き込み防止のためで、 メンバー専用掲示板の類ではありません。

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