炭になるまで

 

窯内部の天井付近が300℃ぐらいになるまで入り口で火をたきます。 

その温度が近づくと、後ろの煙突口からの煙がすっぱい目にしみる煙に変わり、入り口の焚き付けがだんだんと燃えなくなってきます。

 これが炭化の始まりです。

 ここまで私のやり方で3,4日

 

 十分内部の炭材の上部が炭化し始めたと判断したら、入り口下部に小さな空気取り入れ口だけを残し焚き付け口を閉めます。

 正面上部と中ほどにあけた排気穴からも煙が出て十分煙が内部で循環し、底付近までまわってきたことを確認します。

 

 そのとき、窯後ろにある排煙口からはむせ返るほどすっぱい煙がブッシュウーと出てきています。

このままほっておく場合もあるし、排煙口の大きさを制限するときもあります。

 木酢液を採取するときは、この時点で覆いをかけこの煙を集めます。このときの木酢液は色が薄いが酸は強く舌にビリビリきます。

 

 排煙口の煙が真っ白になりモクモクと出てくると、翌日の早朝よりネラシ(アラシ、精錬)の開始です。

 

 木酢液を採取しているときはここまでです。もうすでに、色は紅茶のような色になっていますが、味は水っぽいです。

 

 数時間後、正面の排気穴からは透明感のある青い煙に変わっているはずです。後ろの排煙口からの煙にも青みが混じってきています。

 

 いつ、荒らし始めるかでも出来上がりに大きな違いがでてきます。今の私は、24時間後に窯出しができる時間を逆算して決定します。煙が真っ青になって16時間で荒らしてしまうより、青白で24時間以上かけて荒らしたほうがよく燃える炭(立ち消えしない、燃えカスの少ない)になります。

 ここまで私のやり方で910

 

24時間かけてこの大きさまで炊きつけ口をあけ、内部の炭がオレンジ色になったらエブリを突っ込み窯出しだ。

 

 私の窯出し時間は、細丸、小丸の時で、3:0015:00 上小丸、中丸の時で、3:0018:00

冬は早く終わるが夏は2時間ほど余計にかかります。

 

 金色になった部分だけをエブリで引っ掛けかき出す。かき出す前にいったん入り口にかき集めて十分空気を当て、一本一本を金色(1000)にします。

 

 近づくと大変暑いので長い柄のついたいろいろ工夫した道具を駆使して灰床に炭を活けます。

 

 皮がまだついていないかなど一本一本出来上がりを確認します。皮がついている炭は1000℃の処理が不十分なのでもう一度中にほり込みます。

 

 この時いつまでも赤々としているのが立ち消えしない炭の証です。窯から出てすぐに黒くなるような炭は硬すぎて燃えません。床下にでも入れないと使用がありません。砕けば七輪では燃えるでしょうが、鰻屋さんや火鉢のようなフラットな灰床での使用は無理でしょう。焼き鳥屋さんのようなコンロでは輻射熱が加わるのでオガ炭と混ぜれば燃えるでしょう。とにかくそのような炭は燃えない代わりに火持ちがよいのでそれを好むユーザー様もいらっしゃいますが。特に、燃えない中丸は置物にしか使い道はないでしょう。日本向け備長炭を焼いている外国の炭焼きさんは硬ければよいと思っているのか、買い付けの方がそこまで炭を見ていないのか、以前燃えない外国産備長炭が産廃場に捨てられていたそうです。叩くと金属音がする・・・このことだけで炭の良し悪しを見極めるのは無理です。

 

 最後にスバイ(素灰)をかけて出来上がり。

 

 家に帰って体重を量ると1500gは減っています。夏場は6リットル水分を取るのですが3時間後につめるつわもの炭焼もいまだにいます。この場合最初の口炊き作業が1日で済みます。黒炭なら窯の大きさにもよりますが1週間はかかるでしょう。白炭は余熱利用のためエネルギー効率が優れています。

 これでやれやれでなく翌日暑いうちに木を詰めます。

 

 細い木を一本一本入れていてはいつ終わるかわからないので、切れ目を入れてまっすぐ伸ばし束にします。

 太い木は割ります。私は、割もの、細い目、太い目とできるだけ一度に入れる木の太さをそろえています。それだけのことで仕上がりが格段によくなりますし、焼いている最中も順調に炭化が進みます。

 私はいまだに楔を打ち込み木を割っていきます。ほとんどの炭焼きさんは油圧制御の薪割り機を使っています。私は邪魔だから持っていません。持っているが割り口が美しくないからチェーンソーで端から端まで引き割る方もいます。まぁ、木の目に沿って割っていくのが一番よい炭になるでしょう。

 

 私はトコトコ木を持って入ってくべます。中の温度は高いところで200℃ぐらいあるでしょうか。

自分の汗でやけどをします。奥一列くべると少しは楽になります。だいたい一度に4t〜5t詰めます。

 想像してみてください。真夏に南国南紀で100℃以上の作業場で5tの荷物を運ぶところを。

 

 後はできた炭を製品にする仕事があります。窯出しの後3日ぐらいしてから、スバイの中から炭を掘り出し形を整え大きさや質など20種類以上に選別し箱詰めします。

 できの良いときは楽しい時間です。また、そのような時は仕事が早く終わります。長すぎる炭や、曲がった炭は短くします。お客様が無理に短くしようとすると砕ける恐れのある炭も短くしておきます。

カキーンと叩けばポロッと短くなるような炭は長いまま入れます。

 できの悪いときはつらい時間です。また、そのような時は仕事がなかなか終わりません。

 15.5kgを箱に詰めて合格証を貼って出来上がり。3ヶ月で皆掛重量は17kgになります。

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