【伊吹の源流】

   晩秋の五色の滝エコツアー

 2008年11月16日(日)
 天候:雨のちくもり

 やっぱり、今年も雨になった五色の滝エコツアー。
 伊吹の地元曲谷区の全面的なご協力のもと長浜アメニティ会議の主催で、ぼくたち伊吹源流の会もツアーガイドや案内をして今年で10回目。

 出発時には雨も小降りとなり、紅葉した山々にかかる霧がかえって源流の雰囲気を引き立てます。

 五色の滝への途中では、地元の人の話や、動物写真家、植物の専門家からの興味深い話がいっぱいです。

その1 “放棄された田んぼ”
 山道を歩いて30分。昭和30年代の伊勢湾台風で被災し放棄された石積みの田には、樹齢50年近い杉林となっているが、それも今は手が加えられず、日が差さない暗い林となっている。近くの窪地は、昔の山間部の重要な収入源であった炭焼き小屋の跡。
その2 “石臼切り取り場の跡”
 曲谷区は、木曽義仲の祐筆であった進士蔵人道広が伝えた石臼技術を近世まで受け継ぎ、この山あいから切り出していた。この地は、石灰岩質で硬水が多い伊吹の中では珍しく、軟水が流れる花崗岩質の地です。五色の滝下流の渓谷から切り出した花崗岩を荒削りした後、麓まで背負って山道を下り、仕上げる。
その3 “クマタカを確認”
 動物写真家の須藤さんがあの声が聞こえますか?と、問いかける。40人あまりの参加者が耳を澄ますと、なかなか聞こえない。10秒、20秒、すると、「ピー、ピー」聞こえました。そう、クマタカの鳴き声だそうです。そして、「いたいた!」とスコープを取り出して、皆に見せてくれる。遠くの枝に止まり、背を向けているクマタカの姿が。あんな遠くの小さな黒い姿を見つけられるのはさすがに須藤さん。
 伊吹山系には7つがいほどしか確認されていない希少種。植物連鎖の頂点に立つ猛禽類、このクマタカや、これも伊吹に生息するイヌワシの存在は、その地域がまだ豊かな自然が残っていることを証明している。
その4 “ムササビの巣穴”
 放棄された田んぼの杉の地上から10m近くにムササビの巣穴。ムササビ、哺乳類リス科で、前後肢の間の飛膜を広げて滑空する。須藤さんの説明によると、すぐ上にももう一つ穴があり、これらはつながっていて、何かあった場合にもう一つの穴から脱出するという。完全夜行性で、多分今は穴の中にいるんじゃないか、と。
 お休み中、お邪魔しました。
その5 “熊棚”
 今年は、どんぐりやクルミなど木の実のなり方に偏りがある。この辺りがあまりなく、いつもクルミの木の上にある熊棚が今年は見られないという。でも、少し進むと、ありました今年作成の熊棚が、まだ葉がついているので比較的新しいものみたい。
 大きな熊が木の枝に登り、枝をかじったり、曲げたりして折り、木の実を食べる。折った枝を自分の体の下に敷いて熊棚を作っていくらしいです。頭上の実のなる木の枝が不自然に折れ曲り、重なり合っていたら、それは熊棚。
その6 “いくつもの紅葉”
 道中には、シロモジの黄色い葉、香りのいいクロモジ、でっかいトチノキ、コシアブラの透き通るような五つ葉、ヤマザクラほかいろいろの紅葉だけでなく、冬イチゴの赤い実などがあったと、村瀬先生から教えてもらいました。

五色の滝へ

 そして、いくつもの連瀑を経て五色の滝へ。今年もきれいです。
 ぜひ、ここを遡り、本当の源流にたどり着きたい。

《薬膳弁当としし鍋》
 姉川ダムの残土で作られた大持広場で、曲谷区の皆さんのしし鍋と薬膳弁当でいただきま〜す。

“薬膳弁当”
  メニューは、炊き込みご飯には、むかご、くるみ入り。てんぷらは、しいたけ、よもぎ、ゆきのした、柿、さつまいも、茗荷の味噌和え。たきものは、山蕗、ぜんまい、たけのこ、山椒。そして、すもも、鱒の甘露煮、よもぎ餅と地元産の多彩な献立に、おいしくて、安心、安全。
 “しし鍋”
  昨日11月15日に狩猟解禁。今年はたくさん獲れたようで、たっぷりの猪肉、野菜、きのこが入った1mもある鍋で作られたしし鍋は、とてもおいしい。おいしかったわぁ、というとまた山盛りおかわりをしてくれる地元のおばちゃん、ありがとう。

《エコツアーならではの、学びの時間》
 食事を挟んで、「イノシシとシシ垣について」奈良大学の高橋教授のお話、「伊吹山系の植物について」村瀬さんのお話、「伊吹の動物について」須藤さんのお話、写真やビデオを交え、いづれも興味深いものばかりです。

 “イノシシとシシ垣について”
・GPSでイノシシの行動を調査し、集落のごく近くまで活動している。
・伊吹の大久保でも約1kmのシシ垣が確認されているように、各地で以前から人間とシシとの戦いがあり、今に残されている。(ぼくも、、伊吹のしし垣の草刈にはここ2年ほど頑張ってます。)
・イノシシから家畜化されたものがブタで、ブタの学名は「家畜化されたイノシシ」という意味だそうな。そのブタがオーストラリアでは、イギリスから家畜として持ち込まれたあと、野生化し、今ではヒツジの子供を襲って食べ、何百万頭という野生ブタが外来種≠ニして駆除されているという。
 どこでも外来種問題は大きな課題だ。
 
“伊吹山系の植物について”
・伊吹山は、北方系や日本海系の植物の南限や西限として、石灰岩地帯で冬季寒冷な季節風の影響を受け石灰岩質を好む植物や美しい高山植物が多い。また、古い山でもありイブキ○○、という固有種が多い。
・伊吹山の南面では、昔、地元で畑の肥料や家畜の餌に使っていた草の刈り取りをしなくなったため、コクサギなどの低木がおいしげり、草花が咲かなくなってしまった。このため、コクサギを計画的に伐採し、植生が復元してきた。ゲレンデのススキの伐採も効果があるが、その時期を十分検討する必要がある。

 “伊吹山系の動物について”
・ツキノワグマ、カモシカ、シカ、サル、イノシシなどの生態を須藤さん撮影の貴重なビデオで鑑賞。
・カモシカは冬でもあまり生息域をかえず、雪の中で頑張って生き抜く。
・イヌワシはわずかに伊吹で生息しているが、これら猛禽類は自然の豊かさを示す指標種である。しかし、一回の産卵で巣立つ子は1羽で、近年の繁殖率は20%台に低下し、これでは種の維持が難しい。

 などなど、中身、いっぱいのエコツアーでした。まだまだボクも学ばねば。
みなさんも、また源流の会で企画もしますので、機会があれば是非どうぞ。

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