コーヒー・ブレイク(32)ニッポンの風景
先日、多気郡多気町と言うところにある“鄙茅(ひなかや)”というレストランを訪れた。周りに民家はなく、清流“宮川”のほとり、田んぼと茶畑に囲まれた藁葺屋根の伝統家屋である。それが移築や再生ではなく、全くの新築であるというから驚きだ。それに、この地を見い出すのに10年かかったというだけあって、まるで絵に描いたようにパーフェクトな立地である。このような佇まいの家屋で、蛇行する宮川とその背後にこんもりと形よく控える森の風景を楽しみながら、丁寧にセンス良く作られた料理を食するのはかなりな贅沢である。今流行の“費用対効果”など考えていたら、こんな家屋の建築など思いつかないだろうが、それでも予約でいっぱいというから、意気込みが人づてに十分伝わったのだろう。鮎の甘露煮で有名な老舗だからできたことではあろうが・・・。
2016.5.18
このところ毎日、田園風景の中を車を走らす生活を送っている。植え終わったばかりの稲は、張られた水の中よく目を凝らさないと見えないほどだったのに、今ではもう随分大きくなり、田んぼの緑が目に優しい。麦もあちこちで育てられていて、黄金色の収穫期を迎えている畑もちらほら見える。そんな田畑を大きく波立たせながら風が渡って行く日もある。実り豊かな国に生きていることをしみじみと思う。