コーヒー・ブレイク(27)メダカ
2015.9.7
大火鉢に水を張り庭で飼っていたクロメダカが、6年間の一人暮らしののち今年の春先に大往生を遂げた。体長5pは優にあったろうか、齢を取るほどにからだの黒色が抜けて、最後はほとんどシロメダカとなっていたが、その悠々と泳ぐさまから勝手に“大将”と呼んでいた。冬の間は姿を見ることもなく、もう死んでしまったのかと思っていると、水温が上がる頃またその姿を現わし、無事に越冬したことを知らせてくれたものだ。
調べてみると、自然界でのメダカの寿命は1年だが、飼育環境によっては3〜4年生きることも珍しくないそうだ。それにしても6年はメダカ界の最高齢級だ。新居への引っ越しの際にも鉢ごと連れてきた。餌やりを忘れることも少なくなかったし、水だってあまりに少なくなってきたときだけ庭の水やりのついでにホースから直に足していた程度なのに、何がよかったのかさっぱりわからない。
在りし日の”大将”
主を失った大鉢をどうしようかと思ったが、いったん洗浄した後またメダカを飼うことにした。ペットショップで手に入れた10匹を放つと、まもなく腹に卵を抱かえながら泳ぐメスの姿が見られたので、慌ててホテイアオイを入れるとすぐさま根に卵を産み付けた。それをホテイアオイごと別の鉢に移し孵化を待っていると、10日ほどのちに5oほどの稚魚が何匹も生まれているのに気づいた。6月下旬のことである。
目を凝らして見ないとわからないほどの大きさだったが、餌を食べるようになると見る見る大きくなって、つい先日、雨水で溢れそうになったので鉢の水をひしゃくで捨てていたら、その水の中に何か動く物があるではないか。よく見てみると、なんとまたしても稚魚の姿が・・・。一瞬何が起こったのかわからなかったが、考えてみた結果、まだ幼魚だと思っていたメダカがもうすでに立派な成魚であって、早くも次の世代を産んだということなのだ。
私はまたしても大慌てで、親子を引き離すべくまた別の鉢を用意し、老眼ならずとも見つけにくい稚魚を苦心の末保護した。かつて火鉢ばかりを集めていたことが、期せずしてメダカのブリーダーとなってしまった今、こんな形で役立とうとは・・・。それにしても、まさかこんな事態とは思いもつかぬままにひしゃくで捨てていた水の中には、いったい何匹の稚魚がいたのか。せっかく生まれてきたのにと、申し訳ない気持ちでいっぱいになった。