コーヒー・ブレイク(25)東海道五十三次の内
2015.5.4
亀山も近年街並みの保存を始めたが、すでに宿の主な施設は失われており、僅かに何軒かが当時の面影を残しているに過ぎない。そんな中で、昔呉服屋であったという写真の建物は、繁盛した当時を十分に偲べるものとなっている。裏の庭側から見ると、母屋と二つの蔵の姿が美しい。内と離れに二つの茶室をもっていたり、特に焚口が暖炉のようにお洒落な煉瓦造りの風呂は内部がまた興味深く、湯船周りの壁に埋め込まれているタイルの洒落た意匠には、嬉しさのあまり叫び声を上げてしまった。円形や三日月や花弁をかたどった染付のタイルはすべて手描きで、正方形のタイルはなんとデコ文様なのだ。洒落たリフォームをしたものだ。これを見ただけでも、この地に来た甲斐があったというものだ。
先日、東海道の江戸から数えて46番目の宿場町亀山と、続く47番目の関を散策した。近場にありながらゆっくり見学したことのなかった、いわゆる「伝統的建造物」も初めて時間をかけて回った。
明治10年製の自転車
しかし、例によってここからは独自の視点から、画像によりその魅力の一端を紹介しよう。
あと十年余りでリニア新幹線が東京・名古屋間を走ることになる。その後はさらに西へ。その際には、この旧東海道亀山・関宿あたりを通るのだろうか。新幹線駅の誘致運動もあるのかもしれないがそれは別としても、その昔人々が何日もかかり、京や伊勢やと往来した地を、一瞬にして通過する時代である。しかしそれほどまでに急ぐ必要が果たしてあるのか。人の行き着くところは今も昔も変わらない。
武士の宿泊には、中庭で隔てられた欄間付きの立派な部屋が用意されていた。
続く関宿は、街並み保存が進んでいて見所豊富である。特に、玉屋という大旅籠は保存もよく、江戸の当時の宿場の賑わいに思いを巡らすことができる。