本機では、これまでに製作したミニアンプよりも、更なる小型化、高性能化を目指して出力トランスおよび 電源トランスは全て自分で製作しました。作り方をご紹介できるほど克明に記録を取ってはいないのですが、 ちょっとだけご紹介します。詳しいことが知りたい方はメールにてお問い合わせ頂けましたら、もう少し詳しく お知らせすることができると思います。。


 出力トランス

出力トランスは、もともとミニギターアンプ用に作ったトランスを再設計したものです。ギターアンプの 出力が1Wのつもりでしたので、本機には出力容量が小さめで若干無理しています。

このクラスの出力トランスは単価の安いラジオ用途のトランスしか市販品では存在しないと思います。 それゆえULタップを付けたり、巻線構造を通常サイズの出力トランスと同等にするなど、ちょっと凝った造りを 与えて特徴づけしました。

以下に測定したデータのグラフをご紹介します。これまでに私が巻いたトランスの中では一番の出来ですが、 これはEI−41という小さいコアのおかげではないかと思います。(一般的に小さいトランスの方が良い特性が 出易いと言われています。)

本機では試作1のトランスをLchに、試作2をRchに使用しています。

 電源トランス

出力トランスはボビン巻きでしたが、電源トランスはレイヤー巻き(紙巻き)です。レイヤー巻きというのは プレスボードなどで作った紙のボビン(ファイバー材の場合もあります)に巻く方法で、一層ごとに層間紙を入れ、 整列に巻き重ねて作ります。ボビン巻きよりも巻線作業に時間がかかることや、樹脂の成型ボビンのように フランジが無く巻線作業の難易度が高いため、最近ではレイヤー巻きのトランスを生産するメーカーが激減して います。

電源トランスの設計は、有賀さんが作られた 設計ソフトを使用させていただきました。この場を借りて御礼申し上げます。このソフトは非常によく出来て おり、簡単なパラメータを入力するだけで、正確な答えが得られます。

電源トランスに使用したEI−68サイズはJIS規格外の鉄心なので、設計ソフトでは一番近いEI−66 コアを選択しました。EI−68の方が若干ですがコア定数は大きめになります。このトランスも容量的に少々 無理がありましたので、巻窓の大きさを利用して通常よりも太目の電線を巻いて、発熱に対応しています。 が、本機では電源トランスのコア表面を手で長く触り続けられないくらい温度が上がります。 産業用トランスとしてならば全く問題が無いレベルではありますが、もし作り直すとすれば、少しB電圧を 下げて設計をするべきでしょう。

上の写真は、電源トランスの材料の一部です。手前にプレスボードで作った紙ボビン、巻きヤトイ(紙ボビンを 取り付けて巻線機に装着する冶具)など。後ろにプレスボードや、クラフト紙とマイラーフィルムの複合材 (TK2513)の層間紙が見えます。これらは原紙サイズからコアのサイズに合わせて、押し切りで切り出して 製作します。

これらの他に、コア、取付金具、ネジ類、リード線(または端子版)、粘着テープなどの材料が必要です。

 

それぞれの設計上で若干の無理はありましたが、自作トランスはアンプの小型化に大きく寄与してくれました。 許容できる範囲で無理が効くというのも自作トランスの良いところかも知れません。大成功の部類だろうと 自画自賛しています。材料の少量の調達に難があるのが問題ですが、これからもテーマを持って自作トランスに 挑戦してみようと思います。

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