CSPP出力段の設計例 |
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
今回頒布する出力トランスは、ミニワッターシャーシに搭載可能な小型トランスで、一次側インピーダンスが8kΩ(出力容量7W)、10kΩ(同5W)、12kΩ(同4W)の |
|
いずれかを選択して使うことが出来るものです。 出力規模から考えると、適合する多極管はあまり多くありませんので、まずは実際に使われることが多いと思われる |
|
三極管の自己バイアス回路を例として設計を検討することにします。 |
|
|
「CSPPって何?」のシートの説明のように、マッキントッシュタイプのCSPPは、交流的に他のCSPPと同様に考えることができますが、一方でDEPPにカソード帰還を |
|
掛けた回路でもありますので、DEPP的な考え方で設計することも可能です。 両者の違いは、プッシュプルの波形合成が直列合成か、並列合成かだけの違いですから |
|
正しく理解すれば、どちらの方法で考えても問題はありません。 ここではCSPPおよびDEPPのどちらにも適用しやすいように、まずはプッシュプルの片側のみについて |
|
考えます。 |
|
|
|
出力管として、7119(欧州名:E182CC) |
|
|
という双三極管を取り上げました。 |
|
|
この球は出力管としてよりも、ドライブ段に |
|
|
使われることの方が多いですが、規模的に |
|
|
今回の小型トランスにぴったりです。 |
|
|
|
一次側のインピーダンスは12kΩを選択 |
|
|
して使用します。 ロードラインは12kΩの |
|
|
1/4の3kΩで引きます。 電源電圧は |
|
|
250Vで考えます。 最大プレート損失は |
|
|
ユニット当たり4Wですから、アイドリング |
|
|
電流は16mAとします。 |
|
|
バイアス電圧を考慮するとプレート電圧は |
|
|
241V(250V−9V)となりますので、 |
|
|
(241V、0mA)の点から、3kΩの |
|
|
ロードラインを引きます。(左図参照) |
|
|
共通カソード抵抗は9V/32mA≒281Ω |
|
|
となり、直近の270Ωを選びます。 |
|
|
|
Vg=0Vの特性曲線との交点は、 |
|
|
(91V、50mA)となり、最大出力は |
|
|
(241V−91V)×50mA/2 |
|
|
=3.75W となります。 |
|
|
3kΩに対して3.75Wですから、 |
|
|
出力電圧 Vout は |
|
|
Vout = √(3kΩ×3.75W) |
|
|
≒106.1Vrms となります。 |
|
|
次に出力段の利得を求めます。 マッキントッシュタイプのCSPPの出力段の利得は、カソード帰還として求めることもできますが、簡単にはP−K分割位相反転回路の |
|
利得の算出方法を利用しても大差は無いようです。 P−K分割の利得は下のページの式(3.9)より、カソード側がA2 =
μZ/(rp+(2+μ)Z)と求めることができます。 |
|
|
http://ayumi.cava.jp/audio/pctube/node18.html#SECTION00411000000000000000 |
|
|
ここで、この式に代入する動作点付近の出力管のμとrpを、上の特性図より作図によって求めます。 |
|
|
|
μ = (240V−218V)/(−8V−(−9V)) = 22 |
|
|
|
rp = (248V−221.5V)/(20mA−10mA) =
2650Ω |
|
|
プッシュプルの片側は、P-K間で6kΩの負荷が掛かっていると考えて良く、そうすると、プレート、カソードそれぞれの負荷は3kΩとなります。 |
|
これらを代入すると、 |
|
|
|
|
A2 = μZ/(rp+(2+μ)Z) |
|
|
= 22×3kΩ/(2650Ω+(2+22)×3kΩ) |
|
|
= 0.884 |
|
|
プレート側も同じ振幅ですから、出力段の利得 A は |
|
|
|
A = A2 × 2 |
|
|
= 0.884 × 2 |
|
|
= 1.768 |
となります。 |
|
|
出力電圧が106.1Vrms、利得が1.768ですから、ドライブに必要な電圧 Vin は |
|
|
Vin = 106.1V/1.768 |
|
|
≒
60.0Vrms |
|
(グリッド−アース間)となります。 |
|
|
さて、ここでCSPPとして考えるとプッシュプル波形は並列合成ですので、負荷 |
|
インピーダンス3kΩに対して出力段が並列に入ります。
したがってプッシュプルの |
片側から負荷へ流れる電流は、106.1Vrms/3kΩ/2=17.7mAとなります。 |
DEPPの場合は負荷インピーダンス12kΩに対して、出力段が直列に入りますから |
106.1Vrms×2/12kΩ=17.7mAとなり、当たり前のことですが全く同じ動作 |
となります。 ドライブに必要な電圧は、CSPPもDEPPも両グリッドに逆相の信号を |
入力しますので、どちらも120Vrms(G−G間)のドライブ電圧が必要となります。 |
|
(注: 作図による真空管の三定数の求め方は、下のページをご参照ください。) |
|
|
|
http://www.op316.com/tubes/tips/b170.htm |
|
|
|
|
多極管でも同じ方法で設計することができます。 |
|
多極管の場合はロードラインが肩特性(プレート |
|
電流が急激に減少する肩のように曲がった点、 |
|
ニーポイントといいます)付近を通るように引く |
|
|
ことが最大出力の点で有利になります。 |
|
|
|
多極出力管として、あまり知られていませんが |
|
EL95という球を取り上げました。 馴染みのある |
|
6AR5と同規模でgmの高い球です。 |
|
|
(注: この設計例のまま製作しても破綻はありま |
|
せんが、限られた特性カーブを使い、かつ |
|
説明のため作図しやすい動作点を選んで |
|
おりますので、出力管、トランスに対して |
|
必ずしも最適化はできていません。) |
|
|
これをプレート電圧=スクリーングリッド電圧 |
|
|
=200Vで使い、負荷インピーダンスは8kΩを |
|
選択します。 |
|
|
|
(200V、0mA)の点から、8kΩの1/4の |
|
|
2kΩでロードラインを引きます。(左図参照) |
|
|
Vg=0Vの特性曲線との交点は、 |
|
|
(80V、60mA)となり、最大出力は |
|
|
(200V−80V)×60mA/2=3.6Wとなります。 |
|
2kΩに対して3.6Wですから出力電圧は |
|
|
84.9Vrmsなります。 |
|
|
動作点を(200V、25mA)に設定すると、共通 |
|
カソード抵抗は6V/50mA≒120Ωとなります。 |
|
出力段の利得は、カソード側がA2 =
μZ/(rp+(2+μ)Z)ですので、式に代入する動作点付近の出力管のμとrpを、上の特性図より作図によって求めます。多極管の |
場合は三極管に比べてμが桁違いに高いので、作図によってμを求める事が難しいですから、rpとgmを作図によって求めてからμを計算して求めます。 |
|
|
|
|
rp = 500V/(28.4mA−22.4mA) ≒ 83.3kΩ |
|
|
|
gm = (37.0mA−14.8mA)/(−4V−(−8V)) =
5.55mS |
|
|
μ = gm × rp = 5.55mS × 83.3kΩ ≒ 462 |
|
|
プレート、カソードそれぞれの負荷は2kΩとなりますので、これらを代入すると、 |
|
|
|
A2 = μZ/(rp+(2+μ)Z) |
|
|
= 462×2kΩ/(83.3kΩ+(2+462)×2kΩ) |
|
|
= 0.905 |
|
|
プレート側も同じ振幅ですから、出力段の利得 A は |
|
|
|
A = A2 × 2 |
|
|
= 0.905 × 2 |
となります。 |
|
|
= 1.810 |
|
|
出力電圧が84.9Vrms、利得が1.810ですから、ドライブに必要な電圧 Vin は |
|
|
Vin = 84.9V/1.810 |
(グリッド−アース間)となります。 |
|
|
≒
46.9Vrms |
|
|
グリッド−グリッド間は、その倍の93.8Vrmsとなります。 |
|
|
|
多極管の場合のスクリーングリッドですが、どこへ持って行けばよいでしょうか?
プレートとカソードにはバイファイラ巻きにされた一次側巻線が逆位相になるように接続
|
|
されていますので、アース(電源)を基準として交流的にみると互いに同じ電圧、かつ逆位相の信号が発生します。
そこで、各々のスクリーングリッドをプッシュプルペアの |
|
相手方プレートに接続すると、スクリーングリッドとカソードは同振幅、同位相の信号となります。
つまり、スクリーングリッドに供給される直流電位は、電源のレギュレーション |
さえ良ければ、カソードに対してコンスタント(一定)とみなすことができます。したがって出力段は多極管のネイティブ動作となります。 |
|
|
CSPPの出力段はP−K分割位相反転回路をプッシュプルにしたような動作となり、カソード側はカソードフォロアと同等の動作をしますので、低い出力インピーダンスが |
|
得られ、制動力の高いアンプを作ることができます。 しかし、その代償として出力段の利得が小さく、2未満しかありません。 上の設計例では、三極管に特にgmの |
|
高い球をピックアップしましたので、出力段の利得はどちらも比較的高めの結果となりましたが、総じて三極管はgmが低いため多極管と比較して利得が低くなるという |
|
ことができると思います。 出力段の利得は出来るだけ高い方が、次のシートで説明しますブートストラップの効果が高いので、gmの高い球を出力管に選んだ方が |
|
設計が楽になります。 |
|
|
|
|
(注: CSPPの出力段の利得の求め方については、2008年12月19日(金)14時53分26秒にAyumiさんが「ものつくりの掲示板」に書き込まれた説明文を引用させて |
|
いただきました。) |
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|