左:岩崎さんちの種子採り家庭菜園は自家採種に関する工夫や気を付ける事などやさしく解説してくれる本です。「種採りはやりがいがあり楽しい作業なんだ」と教えてくれる本でもあります。読むと今すぐにでも種取を始めたくなりますよ。
真ん中:自家採種ハンドブックはとにかくいろんな種類の種の取り方が紹介されています。野菜の歴史や野菜の効能なども詳しく書かれていて種のことが大変良く判ります。
右:種まきカレンダーは月の満ち欠け・星座と惑星と地球の位置関係によりいつ何の種を蒔くべきかを教えてくれる本です。R.シュタイナーのバイオダイナミック農法に使われる農事歴で、作業の効率化にも大変重宝します。宇宙の星すべてと野菜(私たち人類)はいつも繋がっているんですね。何かひとつでも欠けるとすべてが生きていけないと考えると感謝せずにはいられません。

たねのお話
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(ごぼうの花)

「種」がなくては私たちは生きていけません。
「種」はまさしく命の結晶です。
「種」の可能性を少し語りたいと思います。

固定種はすばらしい
固定種・在来種・地方種・1代交配・遺伝子組み替え・ターミネイト種子。
種にもいろいろな種類があります。
固定種・在来種・地方種はだいたい同じようなものですが、
固定種はある程度性質が安定した種、
在来種はずっと昔から作られてきた品種、
地方種はある決まった地域で代々守られてきたものを指します。
地方種には京野菜・加賀野菜・浪速野菜・沖縄野菜などがあります。
1代交配とは父親と母親が違うということです。
病気に弱いがおいしい野菜と病気に強いが味がイマイチな野菜を人工的に掛け合わせて、
病気に強くおいしい野菜を見つけた品種のことを言います。
今、あちこちで売られている種は交配種が多いようです。
遺伝子組み替えは皆さんのご存知のように、
人間に都合のよい遺伝子だけを組替えて出来た野菜です。
除草剤や殺虫剤に強い野菜が出現しています。
農作業の効率化と種苗会社の大儲かりの策略のために怪しげな食べ物?が出てきました。
「遺伝子組み替えは危険だ!!」と何気なく思っている人は多いが
実際のところ遺伝子組み替えの野菜を食べ続けたらどうなるのかは分かりません。
現在、われわれを含むすべての人類で大規模実験中です。
ターミネイト種子は1回きり作物です。
出来た野菜の種を蒔いてももう芽が出ることはありません。
毎年種を買わなくてはならないので種苗会社が儲かるという寸法です。
これも遺伝子組み替えの一種でしょう。
その他「スーパー植物」なるものが研究されている話を聞いたことがあります。
水分が極度に少なく、栄養分の乏しい土地でも育ち食料となる植物です。
世界の貧困を解決するためと謳っていますが、
その研究費でどれだけの人が救われるか分かりません。
砂漠は今にもどんどん広がっているのですよ。
誰にでも今すぐ始められ方法があるのに・・・。
別に遺伝子組み替えをしなくても、いま、砂漠にも育っている植物があるのに・・・。
前置きが長くなりましたが、
時芽輝農場ではほぼ100%固定種の野菜が育っています。
固定種の野菜は香り・味ともにずば抜けたおいしさを発揮します。
一般的には固定種の野菜は病害虫に弱いといわれていますが、
私はあることを発見しました。
交配種は多量に肥料を与えることを前提に開発されていますが、
固定種は化学肥料も農薬もない時代から育てられてきたものです。
ということは・・・。
「やっぱり無肥料!!」
そうです。無肥料で育てると病害虫がよってこなくなりました。
とても不思議ですが、無肥料にしたからこそ気付けたことです。
固定種はなんともすごい奴らです。
だからこそ現在まで生き残ってこれたのかもしれません。
私は固定種の野菜に魅せられている毎日です。

 人参の花

自家採種のすすめ
自家採種とは育った野菜の種を採っておくことです。
交配種でも種を採ることは出来ますが、
採った種を蒔くと性質がばらばらになってしまいます。
つまり、父親のほうが強く出たり、母親のほうが強く出たりするわけです。
でも、5年ほど自分の気に入った野菜を選別して種を採り続けるとある程度固定してきます。
自分だけの野菜が出来ちゃったりするわけです。
固定種のほうは同じ種類の野菜の花粉が混ざらなければ同じ野菜の種が採れます。
でも、固定種とはいえ結構いろんな性格の奴がいます。
ちょっと長い奴、ちょっと葉がチリチリの奴、甘い奴に辛い奴・・・。
まあ、それがまた面白いんですけどね。
いまや種はどこでも売られていますが、
どうして自家採種をするのかといいますと・・・。
まず第一に種採りは楽しい!!
野菜の美しい花を見ることができるし、自分の土地にあった野菜が育ってくるのだ。
そして、日本の種の自給率はかなり低くなってきているという危機意識のため。
種を握るものが人類の生死を握ることになる。
種子消毒の問題もあります。
実は売られている種のほとんどはすでに農薬に毒されています。
今年(2005)の秋ぐらいから種や苗に使った農薬の種類と回数を細かく表示する義務が出来ました。
農薬の種類より農薬の有無が問題ですね。
有機栽培といわれている野菜も種子消毒された種を使っているところが多いのです。
やはり種は自分の手で採るのが1番ですね。
「おいしい」と思った野菜の種は採っておきましょう。
驚異に種を集めろ
種を採り続けることによって自分の住んでいる土地と気候に合ったものに変化してきます。
病気や虫が必要のない健全な野菜が育つようになります。
私の畑では無肥料で野菜が育っていますが、
同時に無肥料で育つ種をが育っています。
肥料を与えて育った種は次の世代も肥料なしでは生きていけません。
草むらにこぼれて育った野菜は必死に生きます。
周りの草に負けないよう葉を伸ばし、栄養のあるところへ出来るだけ根を伸ばし、
そして次の世代はこの状況でもたくましく生きたいける種を残そうとします。
自然界では普通に強い種が育っているのです。
連作障害なんてへっちゃら。
同じ所に種をこぼし、同じところで芽を出し、同じところで育ち、また種をこぼす・・・。
とにかく、無肥料で育ち続けた野菜の種は
世界の貧困をも救う種となるでしょう。
5〜10年と時間はかかりますが、研究室にこもって品種改良を研究している学者も
同じかそれ以上に時間がかかっています。
無肥料で野菜を育てて種を採るぐらい誰にでも出来ます。
問題はただあなたがやるかやらないかだけです。

 のらぼう菜の種

おすすめの品種
私が今まで蒔いてきた中でのおすすめだと思う野菜を紹介します。
きゅうり 四葉きゅうり(自家採種4年)
なす 真黒ナス・橘田なす(自家採種3年)
トマト アロイトマト・ワーンミニトマト
ピーマン まだ見つかっていない(ニューエース・埼玉早生を育ててきたがいまひとつ)
かぼちゃ カンリー・長さん・雪化粧
スイカ 嘉宝西瓜(自家採種2年)
大根 阿波晩生・三浦大根(自家採種3年)・打木源助
白菜 野崎白菜・愛知白菜
キャベツ 富士早生
まくわうり おちうり
人参 万福寺大長人参・越冬五寸人参
ごぼう 大浦ごぼう(自家採種2年)
サトイモ 石川早生(自家採種5年)
かぶ 温海カブ(自家採種2年)・金町小カブ・万木カブ・聖護院カブ
ネギ 下仁田ネギ・九条太ネギ
葉もの 丸葉小松菜・のらぼう菜・中葉春菊・ルッコラ・かつお菜・チンゲン菜
にがうり あばしゴーヤ(自家採種3年)
ズッキーニ ココゼリ・アラジン(自家採種3年)

2006年度の種取り

       

 かぼちゃに・ニガウリ・とうもろこしの種を乾燥させています。           種取り用のきゅうりが育っています

       

スイカ・きゅうりに種の乾燥をしています。                              種用とうもろこしの乾燥

       

トマト・黒小豆の種の乾燥中です。                                人参の種が実りました。

種採りのためのおすすめの本



自家採種の種蒔と発芽

2007年度の種蒔の様子です。
左が自家採種3年目のクロピー。
右が自家採種4年目の真黒ナス。
セルトレイに蒔いて、発芽してから本葉がちらりと見えた頃にポットに鉢上げしました。
かわいくて立派な芽です。

不思議なことに自家採種の方が購入した種より早く芽を出しました。
トマトでより顕著な差が出ました。
全ての種は天日乾燥でじっくりと乾かすようにしています。
しかし、直射日光かあたり過ぎるといけないので寒怜紗をかぶしたり、
日陰に何度も移動したりしています(特に夏は)。
トマトはゼリー状のものに包まれていますが、
そのゼリー状のものと一緒に種を1日浸けた状態にして天日に少し当てています。
そうすると、種自体が病害虫に強くなるそうです。
種1粒。
すごいパワーです。
1粒のピーマンの種は何十ものピーマンを実らせ、
1粒のモミは何千ものお米になる。
お願い種を捨てないで。
下の写真の左はヤーコンの芽です。
種芋をポットに植え付けました。
この芽が秋には2メートルの高さになるんですよ。

本当はこぼれ種が1番!!

全ての野菜をこぼれ種で育つのを影ながら支えるのが私の夢です。
種取りは本当のところ人間の都合に合わせたもので邪道です。
自然界はさまざまな植物たちが入り混じって無駄の無い空間作りをしています。
根は絡み合っていますがお互いに養分の分け合いをしています。
ある1種類の植物が占領しているように見えるところもありますが、
決して他の植物たちが絶滅してしまったわけではありません。
「今はあいつらに花を持たせておこう。」と
機会を待って力を温存しているだけです。
野菜は種を蒔けばほとんどの種子が発芽しますが、
草はそんなことでは生き残っていけません。
1年後に発芽する奴、
2年後に発芽する奴、
10年後100年後に発芽する奴。
地面がコンクリやアスファルトに覆われようがじっと待つことの出来る種を生み出すことが出来ます。
100年後にひび割れたアスファルトから芽を出すなんてロマンチック。
無肥料の畑でこぼれだねで育ち続ける野菜は
すさまじい生命力を持っています。
私は1部、「わざとこぼれだね畑」を拵えています。
どうするかと言うと、最初はいろんな種類の種を蒔きます。
翌年から収穫せずに残した野菜の花をいっぱい咲かせます。
もちろん、種がいっぱい実ります。
充分種が実ってカサカサに乾いたら、
茎を切ってグルグルと畑中振り回します。
種を殻(莢)からはずしてはいけません。
莢から外れた種子は絶好のタイミングではなくすぐに発芽してしまうし、
鳥や虫に狙われやすくなります。
まあ、振っているとどうしてもさやから種がこぼれ出します。
気にせず適当に虫や鳥へのおっそ分けと思ってください。
莢から外れてこぼれた種が夏の暑い時期に発芽しても、
すぐに虫たちが処分してくれます。
なるようになるだけです。
全ての種子が生き残ることの方が自然ではありません。
莢ごと転がったものを軽く耕しておくと
徐々に莢が分解されてちょうどよい時期に発芽するわけです。
私は大根にこの事を教わりました。
何のためにこの固い莢が大根に存在するのか?
存在する全てにぴったりの理由はいつもある。
こぼれ種を繰り返していると
たまにすごい奴が出現する。
どう考えても考えられないほどにバカデカイ菜っ葉。
いろんな奴がいてひとつの世界。
この畑独自の生態系が生まれ・・・。
どうなっていくのかは誰にもわからない。
私はただ、野菜の周りの草を刈るだけ。
祈り、感謝し、
人1倍、愛を送り続けることだけ。

発芽物語2007

左:オチウリの芽
右:かぼちゃの芽(自然交雑種)
土を持ち上げる様は圧巻です。
なんというパワーでしょうか?
種の何倍もある芽がどうやって出てくるのか?
不思議な奇跡がいっぱい。
なんてワクワクするんだろうか?

2007年度 種取りの様子

左:のらぼう菜の種
今年もたくさん実りました。
多すぎる感じもしないことも無い。つまり『する』ってこと。
右:ネギの種
こちらも子孫をたくさん残してくれました。
おいしく強い奴はどんどん幅を利かせてくれたまえ。
種さえあれば農業は続けられる。
異常気象さえなければの話だけど・・・。

8月28日ゴボウの種取りをしました。
品種は「大浦太ゴボウ」です。
太く香りがよく味がよく染みるのが特徴です。
だいたい2年に1度種取りをするようにしています。

左が種取り予定の真黒ナス。
表面が茶色っぽくなるまでこのままぶら下げておく。
右が種取用のイエローズッキーニ。
実る期間が長くおいしいので、種を取ることにしました。
ただし、ズッキーニは他のズッキーニやかぼちゃと花粉が混ざり交雑しやすい。
うまくいくかは分からない。

無理なく種取り

種をきっちりと残さないといけないと躍起になって種取りするのはとても負担が大きいことです。
種は野菜の種類にもよりますが、1年で発芽率が急に落ちて使い物にならなくなるわけではありません。
ネギ類は比較的種の寿命が短いようですが。
冷暗所で保存すれば5年ぐらいは持ちます。
私は種蒔のときに何年間か分を混ぜて使うようにしています。
系統(血)が濃くなりすぎないようにするためです。
いろんな奴がいて当たり前なのです。
良い形や味のものばかりだとなぜか病気などに弱くなってくるものです。
多少見栄えが悪くても勢いのいい者を取り込んで混ぜ混ぜにするといいみたいです。
種取りは天候にも左右されます。
種取りをした後は数日間(種が乾燥する程度)晴れが続くことがベストです。
あまり日光が強すぎると乾燥しすぎて種が熱くなってしまうので、
少し日陰に移動するなど手をかけてあげましょう。
種は生き物です。
そして、命そのものです。
乾燥した種は封筒・ビニールパック・ビンに入れておきましょう。
きちんと種を取った日付と名前を書いて。
私は「ありがとう」って必ず書くようにしています。
それから褒めておきます。
「とっても甘いよ」「香りがとってもいいよ」「色が美しいよ」とか。
プラスな言葉で包み込んでおくと、きっと丈夫でおいしい野菜が実ることでしょう。
皆さんも無理なく楽しんで種取りをしてくださいね。

固定種の種が買えるサイト