文雄さんのページ 7
庭の木の影の大小秋めきぬ
土器の風切り飛ぶも秋めきぬ
石垣の宙ぶらりんの南瓜かな
大南瓜料られもせず納屋の中
台風の近し松毬しきり落つ
台風の迷走といふ風の向き
工事場の砂のお山の赤とんぼ
山風に秋の風鈴鳴り通し
虫鳴いて寺領の隅の畑かな
金の尾の草に消えゆく穴まどひ
吊橋の浮き上がりたる今日の月
芋の葉の風におじぎもいやいやも
束の間に夕靄と木犀の香と
秋高く薬草園に山気満つ
投げし石水面を滑る秋の暮
竹薮にぽつと灯の点く烏瓜
身に入みて生家毀せし跡に佇つ
運動会マイクの声のときに割れ
口切や庭に添水の音高く
暦みな薄くなりたる神無月
日溜りのすなはち落葉溜りかな
羽搏いて鴨の散らせる日の雫
風に舞ふ枯葉引きずらるる枯葉
日向ぼこ聞き手喋り手自づから
嚏して頭白紙となりにけり
ブルドーザー来ては枯野を掻き回す
手に受けて潮を吐きたる海鼠かな
手袋の右手ばかりに穴の開き
お喋りに雑炊焦げてしまひけり
ガラス戸のがたぴし鳴りて牡丹鍋
入院の母を見舞ふも年賀かな
夢に見て夢のつづきの喧嘩独楽
駅裏の商ひ揃ふ三日かな
あつさりと的射貫きたる弓始
屋根の雪忘れた頃にまた落つる
掻き集め泥まみれなる雪達磨
合流の川を二分の雪濁
湯通しの菊菜色濃く香り濃く
青天に鳶の輪のある雪崩かな
どこでどう汚れて来しか恋の猫
まだ息の残るもありて獺祭
鮒釣の浮子ぴんと立つ春の水
三方を指し三椏の花咲ける
春光や模様めきたる苔の庭
塵避けの筵廻らせ屋根を葺く
赤兆し緑を兆し春の山
疎水にも淵なすところ水温む
風船の空へ飛び出すデモの列
遷宮の材とし育ち杉の花
乗り捨てのレンタサイクル日永かな
海に出るまで菜の花の道続く
お天守へこぞりて松のみどりかな
春深し浅瀬に漁の鷺並び
風船ガム音立て弾け春深し
水吹かれ背を伸ばしたる胡瓜苗
薔薇剪れば夕べの雨の雫かな
雷鳴のときをり混じる若葉雨
総会に遅れ参ずる薄暑かな
鯖躍る一本釣に竿のなく
恋歌にかな文字多し業平忌