滋 賀 県 庁
地方分権がスタート、出来るだけ
地域に密着した県政を・・・と
企業の経済動向の調査に
半年間嘱託で勤務しました。
京阪電車、島ノ関駅から真っ直ぐ滋賀県庁正門への道がある。徒歩5分で県庁の正門に着く、
県庁本館の隣が滋賀県警察本部、その隣が滋賀県公館と知事公舎がある。
本館の裏に新館と商工労働会館があり、滋賀県公館と知事公舎以外は全て渡り廊下で
繋がっていて、それぞれに玄関がある。朝の出勤は気分を新たに仕事がしたいので
正面玄関から入る事にしている。正門で警護員から挨拶され、庭の噴水を回り込み玄関へ、
再び入口で警護員から挨拶される。大理石の正面階段を二階へ、そこには赤絨毯が
敷かれていて県会議員の部屋がある。更に三階に上ると知事室・副知事室が在り、三階で
各庁舎が繋がっている。それからが迷路となる。本館から新館へ最後に警察本部への廊下に
別れてやっと商工労働会館に辿り着く。三階正面の部屋が商工観光政策課である。
部長以下スタッフ34名の部隊である。県の職員には女性を含めて全員役職名がある。
現場の役職名は主査・主事・主幹・係長・室長・参事・課長等々それぞれに副・主任・補佐・
代理が付いて実に複雑で、誰が上なのか皆目検討が付かない。何の為の役職なのか?
実に摩訶不思議な世界である。デスクにいると全員が課長に報告して、指示を仰いでいるので
課長が現場の最高上位者で あるらしい。差詰め部隊長と言う所である。扉を開けて室内に
入ると副部長(次長)室その奥が部長室である。フロアーの窓際には課長・参事3名・室長の
デスクが横向きにある。デスクの向きから判断して きっと偉いさんであろと思う。
商工観光政策課のフロアーは入口奥に課長机、その前に会議用テーブルがあり、
順に総務担当→ 企画情報担当→金融担当→観光振興室とデスクが並んでいる。
小生のデスクは企画情報担当者の端にあり、柱とプリンターに囲まれ
実に好都合な場所に有った。約3000名の県庁職員、部長が5名、次長と課長が
数えた事は無いが約50名前後であろう、課長と言えばエリート中のエリートである。
以前は課長の会議用のテーブルが背後にあり、近くにいたので部下からの報告、
それに対する指示が聞く積もりは無いが自然と耳に入り、又課長の横にあるテレビの
正面になり県議会の中継も見れ好都合で有った。前課長は昇進して、次長(副部長)
として異動されたが、声が大きく、理路整然としていて、 頭の斬れる、決断力のある人で
あった。何時も、頭髪の乱れは無く、ビシッと背広を着こなし、背筋がピーンと伸びていて
姿勢がいい、よくテレビに出て来る高級官僚風である。自宅が遠いそうで出勤は早く、
朝、おはよう御座います!・・・と部屋に入ると、何時も新聞を読んでいた。挨拶しても
無言である。何処とは無く、寄り付き難い雰囲気があった。その癖真面目な顔で
時々冗談を飛ばす。これが的を得ていて、ギャップの落差があり実に面白い。
転任される時、課長から一生懸命遣って呉れてお世話に成りました。・・・と言われ
いや!・・・こちらこそ大変お世話になり、有難う御座いました。と挨拶、
課長は黙って見ていて呉れたのだなあ!・・・と救われる思いがした。
4月から新課長が来て職場の雰囲気ががらっと変わった。
新課長はかなりのヘビースモカーの様である。時々火の無いタバコを銜えている。
偶々喫煙場所で一緒になり、課長!・・・いっその事、この際辞められたらどうですか?
と話した所 とんでも無い!・・・以前タバコを吸ったら1000円と言う罰金を約束、
我慢出来ずに1本1000円のタバコを吸い最高の美味さだったとの事、
中々気さくな課長の様である。エレベータの前に椅子4脚と灰皿がセットされた
喫煙場所が在り、何時の間にかここが自分の指定席になってしまった。
ここでは色々な人達と知り合った。
隣の部屋にいたKさん、4月の異動で課長に昇進した人である。
この人もヘビィスモカーで私が行くと必ずと言って良い程 喫煙していた。
自然と話す様になり色々と人生観や仕事の事等話し合った。
今日は何処へ行ってきたの?・・・〜会社の社長に会って来ましたよ!・・・
その日の調査内容を話す様になっていた。報告する調査票には記入欄が少なくほんの
一部分しか書けない。1時間も企業経営者と話して来ると色々な情報を入手している。
これが貯まるとストレスになる。話す事でストレスを解消していた様である。
澤田さんの調査は実に面白い、一度一緒に同行させて欲しいと言われていたが
実現しない内に異動してしまった。
毎朝の仕事の一つに係長以下全員で新聞の切り抜き作業をする。
日本工業新聞・日刊工業新聞・日経産業新聞が私の担当である。
滋賀県やIT関連や経済動向に関する情報を切り抜くのである。
これは企業での会話や訪問計画を作成するのに役立つ作業であった。
”デフレスパイラル”に突入の記事が出ると百貨店の責任者に会ったり、
米国に不況風が吹き始め、パソコンの輸出が減少等の記事があれば
関連の部品製造会社の実状を調査したり、 自由に訪問計画を立てられたので
楽しい仕事となった。
何回か経験した事であるが、自分の調査情報の方が新聞より早い場合等、
新聞記者より早いや!・・・と一人ほくそ笑む事も有った。
しかし職場の仲間が出張したり、会議等で忙しい場合は10紙以上担当する様になり、
こう言う日はいくら拾い読みするとは言え厭きてしまい喫煙場所へまたまた直行である。
僅かの期間であったが今までの人生とは全く違った役人の世界を内側から体験出来、
実に楽しい毎日であった。

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